2023 Fiscal Year Research-status Report
明治期の日本正教会伝道におけるロシア・イコンの包括的研究
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22K00194
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
宮崎 衣澄 富山高等専門学校, その他部局等, 教授 (70369966)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イコン / 多色石版画 / 明治期 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本正教会の未研究のロシア・イコンを調査し、明治期日本に伝来したイコンを総合的に分析することにより、現存数が少ない近代ロシア・イコンに未発見の資料を提示し、日本伝来イコンの特徴を明確化する、という目的達成に向けて、本年は二つの課題に取り組んだ。 一つ目は、昨年度取り組んだ京都正教会のイコノスタシス研究の成果を論文としてまとめて、学会誌に投稿した。 二つ目は、日本正教会が所蔵する印刷イコンの調査と分析である。日本正教会には、ロシアから伝来したクロモリトグラフ・イコンと、明治期に日本で制作された石版画イコンが現存している。今年度は主に、日本で制作された石版画イコンの調査・研究を行った。日本の石版画イコンは釧路正教会、旧手賀教会等ではイコノスタシスの王門に使用されている例もあるが、これに着目した研究は未だ行われていいない。そのため、各地の正教会を訪問し、現存する日本正教会所蔵の石版画イコンの資料収集を行った。以下研究の概要を述べる。 石版画イコンが日本正教会で制作されたのは1880年代初頭で、正教会伝道初期のテンペラ画のイコンを補う目的であった。1882年1月16(28)日の亜使徒ニコライの日記には、次のような記載がある。「伊豆からいろいろな聖人のイコンを送ってくれと言われている。・・・(中略)きょうはここで聖人たちのイコンの石版刷りを作ることにする。」 調査の結果、現存している日本製の石版画イコンは同じ主題で共通する図像のものが各地の正教会に現存しており、特に四福音書記者の石版画イコンは、現在も王門に使用されている(釧路・高崎・白河・旧手賀教会ほか)。今後はさらに多くの石版画イコンを調査し、それらを比較分析することによって、明治期の正教会石版画イコンの実態を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ロシアのウクライナ侵攻による影響により、ロシアでの現地調査が難しい状況が続いている。そのため、ロシアの各美術館や教会のイコン調査、文献資料収集が予定通り実施できていない。 今後の状況を見て、可能であればロシアで現地調査を行い、困難な場合はこれまで構築した研究協力者の体制を利用し、資料収集の協力や助言をいただく。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引き続き明治期日本正教会の石版画イコンに焦点をあてて、研究を行う。次のような手順で研究を進める。 1)日本正教会が所蔵する石版画イコンの調査と分析。これまで調査したイコンに加えて、釧路、高崎など各地の正教会に点在するイコンを調査し、図像を分析する。さらに、日本正教会の石版画イコンは、ロシア・イコンから原画をとる場合が多いため、日本正教会に現存するロシア・イコンから原画の推定を行う。 2)明治期日本における印刷技術と正教会の印刷イコン制作。現存する石版画イコンは多色で質が高いため、専門の印刷所で制作されたと考えられる。当時の印刷技術、印刷所を調査し、日本正教会の印刷イコン制作に携わった人物の推定を行う。 3)上記の研究をまとめ、学会発表と学会誌への投稿を行う。
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Causes of Carryover |
ロシアによるウクライナ侵略のため、海外での調査が計画通り進まなかったため。今後の状況をみて、可能であればロシアでの現地調査を行う。
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