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2022 Fiscal Year Research-status Report

何故日本ではスタニスラフスキー・システムは忌避されたのか-スターリンとの関連で

Research Project

Project/Area Number 22K00228
Research InstitutionNiigata University

Principal Investigator

齋藤 陽一  新潟大学, 人文社会科学系, フェロー (30205687)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2026-03-31
Keywordsスタニスラフスキー・システム / 小劇場運動とスタニスラフスキー・システム
Outline of Annual Research Achievements

今年度は、1960年代の小劇場運動を牽引した鈴木忠志とスタニスラフスキー・システムとの関係について研究し、紀要に『鈴木忠志の新劇批判-スタニスラフスキー・システムとの関係で-』という標題の論文を発表した。彼のスタニスラフスキー・システムについての見解には、一定、評価する部分があることが分かった。小劇場系の演劇指導者は概ねスタニスラフスキー・システムを評価しない(そして、多くの新劇系の劇団では好意的な評価が多い)と現代では考えられている面があるので、これは意外であった。
そして、彼がスタニスラフスキー・システムについて考える際に利用していた翻訳書が、現行のものとは相違があることは知られていたことだが、具体的に、鈴木が評論に引用している訳文と原書を比べて「われあり」という概念をめぐって、当時の翻訳書には省略があったのではないかということも指摘した。
また、実際に新潟市の劇団の公演に参加し、弘前劇場というプロの劇団の出身者である主宰者の俳優指導法(特に体の作り方)にスタニスラフスキーのものと共通する部分があることを実感した。その一方、主宰者の口からは「スタニスラフスキーは形からはいるから」といったような批判も耳にした。つまり、歴史的に見て、どの段階かでスタニスラフスキー・システムに関する誤解も生じていたのではないかと考える傍証を得た。内面から役を生きる準備ができない場合に、外面から入るということはスタニスラフスキーにもあった訳だが、それはあくまで一部であるので、それが全てと理解(誤解)されていたのではないかと考えている。
その他に、新劇の側のスタニスラフスキー理解、その政治的な部分について資料収集をしたが、まだ、具体的な論文にまとめるには至っていない。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、3、4年目に予定しているロシアでの資料探査がどの程度できるかが不明であるので、2年目の今年、どこに重点を置くかが定まっていない。少なくとも、いくつかの地域の演劇鑑賞団体を訪問し、新劇鑑賞が政治的な運動とどれくらい関係があったのか、そのことをある程度明らかにしたいと考えている。
一方、ロシア(ソヴィエト連邦)の側からのスタニスラフスキー・システムの政治的な利用(ソヴィエト社会を宣伝するために文化的な優越性を誇るために)の実態について、どこまで迫れるのかが課題だと考えている。

Strategy for Future Research Activity

2023年度は、日本のいくつかの地域の鑑賞団体を訪問し、そこでの演目の過去と現在の比較、演劇スタイル(特に、スタニスラフスキー・システムを巡って)の変化、鑑賞団体の活動自体の変化などについて知見を深めたい。
また、学生アルバイトを雇い、収集済みの演劇公演のちらしを整理し、劇団側からの演劇スタイルの告知状況(「スタニスラフスキー・システムによる」等)、レパートリーの変化について研究を深めたい。
同時に、日本においてロシアの資料にどれくらいアクセスできるのかを探り、来年度以降の研究方法について目処を立てたいと思う。
現段階でロシア関係で行えると考えているのは、スターリン体制下でのスタニスラフスキーの状況の再確認である。1930年代には、生き延びるということが一番の目標となりつつあり、その中でソヴィエト連邦が公式のものとしていたスタニスラフスキー・システムが、どれだけスタニスラフスキー自身が意図していたものであったのか疑問が残る。また、第2次世界大戦が勃発したこともあり交流が途絶えたため、1.スタニスラフスキーが意図したもの、2.ソヴィエト連邦が公式にスタニスラフスキー・システムと呼ぶ物、3.日本でスタニスラフスキー・システムとされた物との間に微妙な相違があると考えられるので、その差異を今一度しっかりと確定させたいと考えている。

Causes of Carryover

資料収集のための出張を、2022年中はコロナのために控えていたために、かなりの金額が次年度使用することになった。また、図書についても、図書自体を手元に置く必要度の判断も含め、資料収集でどの程度のものがコピーで手にはいるかの確認ができず、これも次年度使用となった。
2023年度は、早い時期に資料収集に出かけ、購入すべき図書の確定を行い、2022年度分の経費を使用する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2023

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] 鈴木忠志の新劇批判-スタニスラフスキー・システムとの関係で-2023

    • Author(s)
      齋藤陽一
    • Journal Title

      言語文化研究

      Volume: 25 Pages: 11~19

    • Open Access

URL: 

Published: 2023-12-25  

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