2022 Fiscal Year Research-status Report
Spectrum reality: Creation of a VR environment that traverses the reality between neurodiversity.
Project/Area Number |
22K00238
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
村上 泰介 愛知淑徳大学, 創造表現学部, 教授 (40410857)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ニューロダイバーシティ / ヴァーチャル・リアリティ / 自閉スペクトラム症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標はニューロダイバーシティ(脳・神経機能の多様性)に属する多様な人々が世界をどのように感じているかを調査し、それを元にした多様な世界像をヴァーチャル・リアリティ技術(VR)により複数構築し往来可能とすることで、感覚の差異を理解し認め合う状況を創出することを目指している。 ニューロダイバーシティでは、障害や症候群の有る無しに関わらず、全ての人の脳や神経の状態は異なっていると考える。これは、全ての人に対する脳や神経の違いに基づく人間理解の視点だといえる。 現代の脳・神経科学の発展によって、私たちは、ありのままの現実を多種多様な感覚で受け取り、脳内の異なる部位で情報として処理し統合することで構築された個人の脳が創り出した仮想の現実像を通して現実を認識していることがあきらかになりつつある。こうした理解を元にニューロダイバーシティの多様な世界像を仮想現実としてVR環境に構築する研究を進めている。 2022年度はニューロダイバーシティに含まれる人々の当事者インタビューや試作したVR環境の福祉施設での試用を計画していたが、COVID-19の影響で実現することができなかった。そのため文献調査をもとにVR環境を構築することを中心に研究を進めた。 構築するVR環境では、視覚、聴覚、身体感覚(固有覚)にアプローチし、それぞれの感覚の同期・非同期のタイミングを変調させることで世界像を変化させることを目指している。そのため、視線認識機能を持つヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)を導入し、装着者の視線に応じてVR環境を変化させる研究を進めた。また、HMDに自作の外部機器を組み込みセンサーからの情報取得やアクチュエータ制御を進め固有覚の情報をVR環境に取り込む研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニューロダイバーシティに属する人々で自閉スペクトラム症の人や、その養育者にインタビューすることを計画していたが、COVID-19の影響で福祉施設での調査が困難となったため、文献調査を中心に進めた。調査を元にVR環境を構築し、動作確認できる状況まで試作を進めた。同試作を福祉施設で試用してもらい検証する計画であったが、こちらもCOVID-19の影響で不可能となった。 一方で、自閉スペクトラム症の抱える困難として対象への注意が定型発達と異なることなどに着目し、新たに視線認識装置を組み込んだHMDを導入し、視線認識装置を用いて試作したVR環境内の対象への注意を観察する環境構築を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
完成した試作を元にニューロダイバーシティに属する多様な人に向けた展示を計画している。展示は愛知県内の児童館や福祉施設などを中心に実施予定である。これらの施設での展示を元に検証を進め改良を進める計画である。 また、検証においては容積脈波を活用することを計画しており、検証のための準備として容積脈波を可視化する環境の構築も進める。 福祉施設での調査や検証に関しては、COVID-19の影響でそれまでの研究で構築した施設との関係が途切れてしまったため、新たな施設と関係を構築して推進している。
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Causes of Carryover |
当初計画では福祉施設での現地調査を元に研究を推進する計画であったが、COVID-19の影響で福祉施設での現地調査が不可能となった。また、福祉施設での検証過程で海外より研究協力者である容積脈波計測を使った調査を元にした芸術作品を制作している方を招聘予定であったが、同予定も福祉施設での現地調査が不可能となったため断念せざるを得なかった。2023年度はCOVID-19の影響が限定的となり、福祉施設での現地調査が見込めることから、福祉施設での展示や、海外の研究協力者の招聘を当初計画どうり実施したい。また、福祉施設での調査を元にした試作を定型発達の幅広い世代の人に体験してもらうため、児童館などで展示する計画も2023年度内に実施する計画である。
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Remarks |
メディアアート研究会「仮想空間での映像表現について」と企画展示「仮想空間での映像表現展」が開催され、仮想空間における映像表現へアプローチしている研究者としてVR展示を実施した。
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