2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K00247
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
長谷川 慎 静岡大学, 教育学部, 教授 (00466971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野川 美穂子 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (50218294)
長谷川 愛子 東京藝術大学, 音楽学部, 教諭 (90466970)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 箏 / 楽器変遷 / 古楽器 / 古楽器演奏表現 / 地歌箏曲 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、1年次に引き続いて古態の箏に関しての文献調査と箏曲演奏家へのインタビューを実施し師匠筋の芸談や自身の経験についての情報収集について引き続き調査対象エリアについて古態の箏に関するフィールドワークを実施し、更なる資料収集を行った。同様に、収集した楽器の中で整備をおこなうことができる楽器について実際に弦を張り楽器として使用可能な状態に調整することと、数名の演奏家に協力を依頼して当時使用されていたものと同等の弦、箏爪、箏柱を使用してかつての音色を再現に取り組んだ。2年次のまとめ情報・意見交換の場としてシンポジウムを開催することとしていたが、長磯箏の演奏に取り組む演奏家との情報交換にとどまった。 今年度の成果としては、昨年度に続いて、長磯箏を用いて箏組歌の研究演奏(3月17日第21回箏曲組歌研究会・研究代表者)、演奏団体、演奏家、博物館からの依頼によって、演奏会場での長磯箏・五八箏の体験・展示およびレクチャー(4月30日令和5年度公益社団法人日本三曲協会定期公演春季三曲名流演奏会)、演奏会場での長磯箏レクチャー(5月3日小池典子リサイタル・3月18日川瀬露秋リサイタル)、浜松楽器博物館での長磯箏を用いた古楽器レクチャーコンサート(11月4日浜松楽器博物館友の会コンサート・研究代表者と長谷川愛子)を実施したことが挙げられる。 古態の楽器調整に関しては1面の長磯箏の糸締めを実施し、研究協力者へ貸与した。この際「龍眼」を当時の部材から現代の部材へ変更を行う必要があったが、古態の楽器を現代の舞台演奏に用いるためにどの部分を補強・整備する必要があるかについて明らかにすることができた。 箏の各部の名称について研究代表者が所蔵する大正年間の箏製作者と顧客との手紙に詳細な記述があることを見つけた。この他、飾りの優劣(使用素材、蒔絵、仕上げ)についても愛好家や楽器店から情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果としては、昨年度に続いて、長磯箏を用いて箏組歌の研究演奏(3月17日第21回箏曲組歌研究会・研究代表者)、演奏団体、演奏家、博物館からの依頼によって、演奏会場での長磯箏・五八箏の体験・展示およびレクチャー(4月30日令和5年度公益社団法人日本三曲協会定期公演春季三曲名流演奏会)、演奏会場での長磯箏レクチャー(5月3日小池典子リサイタル・3月18日川瀬露秋リサイタル)、浜松楽器博物館での長磯箏を用いた古楽器レクチャーコンサート(11月4日浜松楽器博物館友の会コンサート・研究代表者と長谷川愛子)を実施したことが挙げられる。 古態の楽器調整に関しては1面の長磯箏の糸締めを実施し、研究協力者へ貸与した。この際「龍眼」を当時の部材から現代の部材へ変更を行う必要があったが、古態の楽器を現代の舞台演奏に用いるためにどの部分を補強・整備する必要があるかについて明らかにすることができた。 長磯箏の各部の名称について述べられた文献が少ない中、研究代表者が所蔵する大正年間の箏製作者と顧客との手紙に詳細な記述があることを見つけた。この他、飾りの優劣(使用素材、蒔絵、仕上げ)についても愛好家や楽器店から情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果の中で、これまでの研究成果を様々な機関、団体、個人のイベントで発信できたことは、本研究の目的である「現代における古態の箏演奏の可能性と課題を明らかにする」上で大きな成果であったと捉えている。特に(公社)日本三曲協会演奏会の様子は同会会報で2ページにわたって掲載され、全国の箏曲界に対して古態の楽器の可能性を周知できたと考える。この演奏会以降、研究代表者の周りでも長磯箏を入手し、自身の演奏会で使用する演奏者が少しずつ現れてきた。また演奏者の家に元々所蔵の長磯箏を自身のリサイタルで活用した演奏者もあり、箏曲界において確実に古態の楽器の認知度が上がってきている箏を実感している。 研究代表者、研究分担者および研究協力者の継続的な長磯箏の演奏研究から、爪の当て方、撥弦位置、力の入れ具合などの検証を行った。今年度は、独奏、箏同士の合奏、古態の三味線との合奏、古態の三曲合奏(長磯箏、古態の三味線、古態の胡弓)といった様々な演奏形態での検証を行った。令和6年度にはその成果を公開演奏で発表できるところまで解明できつつある。 他方で、五八箏に関しての演奏研究は十分に取り組めていない。資料の収集として、五八箏を嫁入り道具として仕立てた際の完全なセットを入手することができたものの、分析までは至っていない。以上のことから、当初計画はおおむね達成できていると判断した。
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Causes of Carryover |
研究代表者が前倒しとして請求した額のうち、予定していた調査旅費が少額ですんことと、令和5年度に公開シンポジウムを開催しなかったことで研究分担者2名の分担金がほとんど未使用となったことから次年度使用額が生じた。令和6年度に予定している成果発表会で使用する。
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