2023 Fiscal Year Research-status Report
アメリカの非営利地域劇場における「デべロップメント」機能に関する研究
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22K00248
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
五島 朋子 鳥取大学, 地域学部, 教授 (80403369)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非営利劇場 / 公共劇場 / 資金調達 / 寄付メニュー / デベロップメント / コミュニティシアター |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカの非営利劇場におけるデベロップメント担当スタッフの業務内容、求められるスキルや資質についての調査検討を踏まえ、2年目は各劇場の公式サイト及び年次報告書から、劇場が掲げるミッションと、デベロップメント活動及び資金調達メニューとの関連を探るとともに、具体的な寄付メニューを調査した。そこから、今後の日本の公共劇場におけるファンドレイジングの可能性を考える論点の整理、およびアメリカ非営利劇場のデベロップメント担当へのインタビュー調査項目を整理した。調査検討は、日英の非営利劇場および日本の公立劇場などで制作担当として従事した経験を持つ斎藤啓氏の協力と、定期的な研究会を行いながら進めた。地方都市を拠点とし、事業費規模や活動タイプの異なる7劇場を調査の対象とした。寄付メニューは、事業費規模の大きな劇場では、個人寄付の金額ランクごとの特典が細かく設定されているが、事業費規模の大小に関わらず、個人寄付のメニューカテゴリー(定期的な寄付、都度寄付、マッチング、株式や投資信託による寄付、様々なタイプの遺贈寄付など)には大きな違いは見られない。アメリカ社会の寄付の歴史と制度が、普遍的に非営利劇場の運営にも適用されている。つまり、各劇場の創造事業やミッション・バリューが、それぞれの寄付メニューやその内容を特色付けるものではないということが確認できた。したがって、運営費規模の大小に関わらず、資金調達担当(大規模劇場では複数名、小規模では兼任であっても)を置くことは、劇場運営としては当然であり、その専門性は劇場間を超えて、芸術関係以外の非営利組織との人材移動も当たり前に行われている。一方、コロナ禍を経て、非営利劇場の収入に占める助成金や寄付の割合は増えているが、観客数・チケット収入は回復していないというTCGの報告があり、資金調達以外のデベロップメント活動の重要性が増していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
学務の多忙と急速な円安進展のため、当初計画していた複数回の現地調査を実施する日程と予算の確保が困難となり、訪問調査の対象絞り込みと渡航期間の調整が難航しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
学務の多忙と、特に国際的な経済状況は昨年度よりさらに厳しくなり、当初計画していた一定期間の現地劇場調査は断念し、2024年度に開催される予定のTheatre Communications Group による全国集会にオンライン参加することで、現在の非営利劇場の運営・資金調達・デベロップメントにおける動向を把握するととともに、デベロップメント関係のキーパーソンを把握する。2023年度は、メールおよびオンラインによるインタビュー調査を複数計画したが、日程調整が不調に終わっているため、次年度改めて研究協力者とも手分けしながら実施し、昨年度までのアメリカの非営利劇場の事例調査のうち、劇場のミッションと寄付メニューの実態、デベロップメント担当者の専門性に関する検討について報告をまとめる。
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Causes of Carryover |
当初計画していたアメリカ非営利劇場訪問調査が実施できなかったため。 全米の非営利劇場ネットワークの全国集会への参加費、会員費、研究協力者への業務委託費に充当する。
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