2022 Fiscal Year Research-status Report
音楽療法による身体活動量および末梢循環改善の定量的変化に関する研究
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22K00261
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Research Institution | Nagoya University of Arts |
Principal Investigator |
森川 泉 名古屋芸術大学, 芸術学部, 准教授 (10828635)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 音楽療法 / 皮膚血流変化 / 活動量 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、能動的音楽療法の実施プロトコールを作成し音楽療法を健常高齢者に対して実施し計測を行った。 【音楽療法実施プロトコール(セッション構成)の作成】多感覚(視覚、聴覚、体性感覚)に働きかけ、かつ認知機能、情緒、運動機能、時間感覚を賦活するプロトコールを作成した。これらの特徴的事項を取り入れた6つの小項目を含む音楽療法セッション構成では、参加者の記憶にあるなじみの曲を使用する、写真やイラストを用いて視覚的刺激を取り入れる、操作が簡単な楽器(ベル、トーンチャイム)を用いた演奏を行う機会を設ける、使用楽曲による情緒への働きかけをする、に留意した。また歌唱活動ではその場でリクエストに応えるなど、参加者の意思、好みに合わせた楽曲を用いて活動の楽しみを提供し、参加者とのコミュニケーションを行いつつプロトコールを遂行し、通常の音楽療法介入法と同様に行った。【音楽療法の実施】愛知県北名古屋市回想法センター利用者である健常な高齢者18名(男性8女性10名:平均年齢78.8歳±3.9歳)を対象とし、4名から5名のグループに分け、計4グループに対し1回約45分間の音楽療法を施行した。音楽療法士である著者と、計測者1名で担当した。【計測】①身体反応の計測として、体表温度計による手指皮膚温度の精密測定を音楽療法実施前後、各6つの小項目ごとに計測を行った。②全参加者に小型活動量計による活動量の計測を行った。体表温度計も小型活動量計もいずれも小型のポータブル計測装置であり、侵襲性・拘束性は無い。【アンケート】音楽療法終了後に、気分の変化、身体的状態に関するアンケート調査を実施した。現在以上のデータを解析中である。 本研究は音楽療法受療の際の身体的生理学的な変化を計測し、科学的に評価することで心理的のみならず生理学的効果をも示すことができ、音楽療法の新たな効果が示せるという意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
音楽療法プロトコールの作成、音楽療法使用楽器の購入、健常高齢者への音楽療法実施と音楽療法施行中の体表温度計による手指皮膚温度及び小型活動量計による活動量の計測、音楽療法施行後のアンケート実施とこれまでのところおおよそ順調に進展している。 体表温度計による手指皮膚温度と小型活動量計による活動量を計測したデータ及びアンケート調査用紙を現在解析中である。 新型コロナ感染症対策のため、病院入院患者、施設入所者に対する音楽療法の実施は実現できなかった。健常高齢者に対する音楽療法では当初予定の対象者1グループの設定10名であったが、新型コロナ感染症対策のため、施設側から参加者1グループ5名まで、音楽療法施行側は2名と指定されたことにより、今後の対象集団を5名程度に変更することも視野に含め、疾患を有する対象については臨機応変な対応が必要となることが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に計測した皮膚表面温度、活動量計データの解析の結果より、セッション構成の各項目と血流や心拍変化の特徴を検討し、効果的な手応えのある項目については重点を置くなど、セッション構成に修正しつつ実践を行う。アンケートにおいては参加者の気分と身体状態を質問する内容であり引き続き同様の内容で行う。さらに令和4年度と同様に計測、アンケートを実施し、さらに解析を進める。特にリズムを表出する活動、懐かしい歌唱活動、楽器演奏の項目と皮膚血流変化との関連(相関)を明らかにする。 音楽療法の実施については健常者、及び認知症と診断された高齢者、あるいは精神疾患患者(各10名程度)に対して施行する予定である。ただし認知症高齢者入所施設、精神疾患患者入院病院ではコロナ感染症対策が厳しい状況があり、予定している疾患を有する対象者に対する音楽療法実施が難しいことが考えられる。そのため年代を変えた健常者を音楽療法対象者として計測を施行することも検討中である。20代、30代、40代のうち、可能な集団に対し音楽療法を施行し、プロトコール項目ごとの手指表面温度と音楽療法中の活動量を計測し、さらに音楽療法終了後にアンケート調査を実施する。各年代の健常者における音楽療法に対する生理学的変化をとらえる事ができるものと考えている。 またデータ解析を進め、手指表面温度を視覚的提示できる方法を検討し完成させる。 以上、引き続き音楽療法参加者に見られる生理学的・身体的介入としての変化を科学的に評価していく。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症対策によって予定していた音楽療法実施の際のアシスタントに対する人件費が不要となったため、また予定していた病院、施設への音楽療法実施がコロナ感染症対策のためにできなくなったため当初予定していた機器の購入も不要となったため、当該助成金が生じた。 今年度音楽療法に使用する対象者に即した楽器の購入を計画している。また音楽療法実施中の計測に用いる計測機器、また解析機器、統計ソフトの購入を計画している。さらに学会発表に関する参加費用と旅費、書籍の購入等を計画している。コロナ感染症対策緩和によって、音楽療法実施アシスタントの人件費が発生する予定である。
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