2022 Fiscal Year Research-status Report
声楽教育における個人に適切な呼吸法の究明ー腹式呼吸と胸式呼吸
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22K00265
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Research Institution | Osaka Shin-Ai College |
Principal Investigator |
楠本 未来 大阪信愛学院短期大学, その他部局等, 非常勤 (10885536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
饗庭 絵里子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40569761)
津崎 実 京都市立芸術大学, 音楽学部, 教授 (60155356)
岡野 真裕 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (90809956)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 呼吸法 / テキストマイニング / 生体計測 / 音響解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、声楽教育の歴史において、呼吸法について指導されてきたかを調べるため、1908年から2021年までに出版された76冊の声楽教則本から呼吸法の章のテキストマイニングを行った。呼吸法において、かつては腹式呼吸、胸式呼吸の2通り以外にも、複数種類の呼吸法について言及されていたが、近年に近づくにつれ、歌唱時には腹式呼吸を用いることが唯一正しいといった記述が目立っており、胸式呼吸の言及機会から減っていた。歌唱において最適な呼吸法に唯一の正解はなく、歌唱ごとに異なるのではないか。という申請時に掲げた第一の問いについて考察するにあたり、重要なヒントがあると考えた。 第二の問い、指導者が歌唱者の身体の状態を把握し ,歌唱者に最適な呼吸法を見出すにはどうすればいいのか、その判別指標を出すための予備実験をプロの歌い手数名を被験者として複数回行い、どのような状況下で、どのように計測するのが、この課題に適合しているか、また、どのような歌唱課題が、仮説を立てた内容の結果を導きだすか等を把握することができた。 また、2021年に声楽レクチャーコンサートVol.1腹式呼吸?胸式呼吸?自分に合う呼吸法はどっち?(京都)の公演中の舞台で、プロの歌手の歌唱中に呼吸トランスデューサを腹部と胸部に取り付け計測した結果を用いて、2022年度秋季に開催された日本音楽知覚学会でポスター発表を行い、ポスター発表選奨《歌唱における呼気意識型呼吸と吸気意識型呼吸 腹部と胸部の広がりを指標とする判別方法の検討》を授賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予備実験において、有意義な課題の探索に時間を要したため、本実験に進まなかった。現在、順調に予備実験を完了し、倫理審査を通過後、本実験に進む。
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Strategy for Future Research Activity |
各声種(ソプラノ、アルト、テノール、バス)ごとに異なる呼吸法を持つ、プロの歌手8名を被験者として、腹部と胸部に、それぞれベルト式の呼吸トランスデューサを取り付け,腹囲と胸囲の時系列的な変化を計測する。プロの歌手は、舞台歴20年程度の熟練した現役の歌い手とする。 申請時には、それぞれの歌手が、獲得した呼吸法と、そうでない呼吸法の2通りの歌唱時における各データを採取する予定であったが、一人の歌い手が、日常的に使っていない呼吸法で歌唱を行ったデータは、実験結果として、その呼吸法そのものであることにおいて信憑性に欠けるという理由で、計測を行わないこととなった。 プロの歌い手を被験者とした計測結果の解析終わった後、プロの歌い手が歌唱した課題を歌いこなせるアマチュアの歌唱者を被験者として、同様の計測を行う。姿勢に関わる要素である重心については、床反力計を用いて計測を行う。 申請時は、口の開きを観察するため、歌唱者の妨げにならないようカメラによる撮影を行い, オープンソースの顔動作解析ソフトツールであるOpenFaceを用いた画像解析を実施することを予定していたが、これに加えて、二つの呼吸法では、呼吸のタイミング、吸気の速度も異なる可能性についても、予備実験を通して気づきがあった為、これらも合わせて観察、及び考察を行う。 音響解析歌唱音声の音響解析については,予備実験によりビブラートおよび高周波領域に違いが観察できる可能性が示されているため,継続してこれらを観察する. 主観評価およびパフォーマンス評価は、計測時に被験者を対象として、質問紙調査による主観評価を行う。
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Causes of Carryover |
昨年度に予定していた本実験を行わなかった為、岡野真裕氏の分担金である謝金の予算が繰越になった。また、20万円の機材購入を予定して代表者が前倒し請求を行ったが、機材の値下がりによって、次年度に繰越になった。 次年度に、謝金及び旅費として使用する予定である。
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