2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on Information Accessibility and History of Science, Technology and Society Concerning the Concept of Universal Design in Japan
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22K00281
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
青木 千帆子 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (00584062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白銀 純子 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (00329161)
中野 泰志 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (60207850)
倉片 憲治 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90356931)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ユニバーサルデザイン / アクセシビリティ / ICT / LMS |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、①大学で使用するICTのアクセシビリティ改善に向けた検討と、②ユニバーサルデザインの科学技術史研究に取り組んだ。 ①大学で使用するICTのアクセシビリティ改善に向けた検討としては、2021年度の実態調査から、授業のオンライン化は障害種別ごとに異なる影響を及ぼしたことが明らかになった。例えば、身体障害者にとってオンライン授業は、彼/女らを無力化するハード面における社会的障壁から解放し、障害者と認識されないことのメリットをもたらした。しかし、視覚障害者や発達障害者にとっては、情報の散逸とICTのアクセシビリティという、社会的障壁の存在を露呈するものとなった。 2022年度は、このような成果を学会報告しつつ、改善に向けた検討を行った。その結果、LMSのアクセシビリティを確保するためにWCAGが機能するための要件として、1.高等教育機関で使用するICTがWCAGに準拠することを促進する法制度、2.支援技術の利用支援事業、3. 社会モデルに基づく体系的支援の3点が必要であることを導き出した。この成果は国際会議で報告した。 ②ユニバーサルデザインの科学技術史研究としては、共用品推進機構における議論の歴史を振り返り、①概念の定着、②参入企業の拡大、③共用品の心、④良かったこと調査の4項目からたどった。結果、共用品の認知度が高まり参入する企業が増えることを歓迎する一方、手軽に企業イメージを改善したいという希望にどのように対応するのか、模索する様子が伺われた。また、共用品やユニバーサルデザインの普及を目指す取組が広がる中、解決手段の社会性のみがエッセンスとして昇華され、発生メカニズムの社会性、解消責任の社会帰属に関する議論が後景化する実態があることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①大学で使用するICTのアクセシビリティ改善に向けた検討については、2022年度までに実態調査がほぼ完了した。それは、本調査で課題として取り組んでいたLMSのアクセシビリティがW3C Web Accessibility Consortium (WAI)においても課題として認識され、国際的な文脈での議論が始まったからである。このため、本科研の取組として実施予定だった改善策に関する検討作業は中止し、Cognitive and Learning Disabilities Accessibility (COGA) Task Forceの議論をキャッチアップすることに努めた。また、2023年度以後はこのタスクフォースが発信するガイドライン等の日本への応用可能性について検討していくことになる。 ②ユニバーサルデザインの科学技術史研究については、公益財団法人共用品推進機構の取組に関する調査を継続して進めた。調査結果は、2021年度2022年度ともに障害学会にて報告した。また、分担研究者をつとめる科研費基盤(A)「生を辿り途を探す――身体×社会アーカイブの構築」の一環として、共用品推進機構に保管されている1970~90年代の資料のアーカイブを進めている。アーカイブ作業が完了した際には、成果が機構ウェブサイトにて公表される予定である。また、アーカイブ作業を通して触れる資料から、専用品が主流の議論の中で、どのように共用品という概念を発展させ、共有してきたのかという点に関する新たな知見が得られることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
①大学で使用するICTのアクセシビリティに関する研究 前述したように、LMSのアクセシビリティについては、W3C Web Accessibility Consortium (WAI)が課題として認識し、ガイドライン整備等の取組を始めた。2023年度はこれに関する議論の動向を把握しつつ、2022年度までに実施した研究結果を論文にまとめる作業を進める。また、WAI等が示したLMSのガイドラインについて、アンケート方式の評価を実施する。日本のLMS開発事業者や、オープンソースを活用している大学のIT担当部署に、一定期間試用してもらった上で評価してもらう。その内容に基づいて、新たなガイドラインの日本への適合可能性について、実施分担者と議論する。 ②ユニバーサルデザインに関する科学技術史研究 2023年度は、2021年2022年に実施した共用品推進機構に関する調査を論文にまとめる。また、補足的に2020年度に着手した支援技術の政策史に関する調査を実施し、総合的な検討を進める。科学技術社会論の観点から分析を行い、日本においてユニバーサルデザインや支援技術をめぐる政策がどのように形成され、その結果、どのような影響を社会に対してもたらしたのかを詳らかにする。
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Causes of Carryover |
北海道で開催委される予定だった学会がオンライン開催となり、研究代表者及び分担者の航空券等をキャンセルした。このため、旅費分を次年度使用額とすることになった。 使用計画としては、国内外における調査費用や学会参加費に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)