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2023 Fiscal Year Research-status Report

近代日本における衛生リテラシー涵養の歴史社会学的研究

Research Project

Project/Area Number 22K00283
Research InstitutionBukkyo University

Principal Investigator

香西 豊子  佛教大学, 社会学部, 教授 (30507819)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords「家庭」衛生 / 「公衆」衛生 / 「私己」衛生 / 歴史社会学 / 花柳病 / 避病院 / 衛生統計
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、近代日本における衛生リテラシーの涵養実態の解明をとおして、ひとびとが当時身をおいていた「衛生」という運動の射程を捕捉するものである。2年目となる2023年度は、衛生学の「知」の移入の様態を追った前年度の成果を発展させ、その展開の過程がうかがえる3つの領域を中心に資料調査をおこなった。
1つ目は、「家庭」という領域である。「公衆」とも「私己(個人)」とも異なる衛生の対象として、明治20年代に見出された「家庭」は、「私己」衛生の実践の場であると同時に、「公衆」衛生が個人の行動へと介入する場として機能した。本研究では、そうした結節点としての「家庭」の性質を浮き彫りにする事例として、戦前期の国民病である花柳病(花柳界から「家庭」へと持ち込まれる性病全般)を取りあげ、「家庭」の「主婦」にその管理が期待されていた様相を捉えた。
2つ目は、ひとびとが学知や政策と接した避病院である。当研究室所蔵の明治期の避病院の医局日誌や周辺資料を読解し、避病院が伝染病患者の隔離所としてのみならず、大学での研究を実践する場、ならびにあらたな「知」を産出する学術研究の現場としてあったことを確認した。
3つ目は、ひとびとの生の状態を俯瞰し、当局がそこへ介入する根拠ともされた衛生統計である。収集した各種資料の読解・分析により、明治初年より徐々に整備された衛生統計が、衛生学の「知」の応用段階から、一国の「衛生」状態を把握する段階を経て、しだいにさまざまな政策にも応用され、戦中期には植民地への入植にも援用されていたことを確認した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の研究計画では、衛生の「知」が展開された領域として、オーソドックスに、学校教育で用いられる書籍(教科書・指導要領なども含む)や衛生団体発行の雑誌類を考えていた。だが、それらのパイロット調査をすすめるなかで、収集・読解する資料の範囲を拡大する必要性がでてきたため、衛生当局発行の小冊子や衛生叢書から衛生統計の報告書類にまで対象を広げた。結果的に、その分時間が割かれ、年度内にすべての調査・分析済み事項を論文にするところまでは進まなかったが、研究全体からみれば、成果の取りまとめは最終年度となる2024年度で問題なくおこなうことができ、むしろ調査範囲を広げたことにより研究テーマがより深堀されたといえる。

Strategy for Future Research Activity

最終年度となる2024年度は、前年度の研究成果を論文にしていくのと並行し、当初の計画通り、近代日本の衛生リテラシーが、種々の疾病(とりわけ伝染病)を経験するなかで、どのように修正・獲得・伝承されたかを跡づける。年度末には、過年度の成果もふくむ本研究全体の成果を報告書にまとめる。

  • Research Products

    (1 results)

All 2024

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 日本的「公衆衛生」の黎明期――森林太郎「公衆衛生略説」を手がかりとして2024

    • Author(s)
      香西豊子
    • Journal Title

      医学史研究

      Volume: 105号 Pages: 56-75

URL: 

Published: 2024-12-25  

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