2022 Fiscal Year Research-status Report
GHQ/SCAP検閲と米国の対日占領政策が戦後日本文学・文化に与えた影響
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22K00316
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
天野 知幸 京都教育大学, 教育学部, 教授 (40552998)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | GHQ/ SCAP検閲 / 対日占領政策 / 東西冷戦 / 帝国主義 / 移動 / 接触 / 引揚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,帝国主義時代の《移動》《接触》に関する記憶の生成と表象の問題について,作家研究の枠内で捉えるのではなく,国際政治の枠組みのなかで考察することで,日本の戦後の言説・表現の多くが日米関係や東西冷戦といった国際情勢と深い相関関係にあることを明らかにするものである。 本年度は計画に従い,ゴードン.W.プランゲ文庫を調査し,引揚および外地・異民族・ソ連・共産主義言説の検閲実態について調べた。その結果,1940年代後半において,共産主義言説に対する検閲主体の監視の視線が強まり,東側諸国(とくにソ連)を他者化するような言論空間がGHQ/SCAP検閲によって生まれていた可能性について考察した。また,このことは,ソ連において共産主義教育を受けた引揚者(復員兵)らの表象に対して,直接的・間接的影響を及ぼしていることなどを考察した。 以上の考察結果について,パリのイナルコ大学(東洋学研究所)で開催された国際シンポジウム「2023年、日本文学研究の現在と世界の視野」において,個人発表「ポストGHQ占領期における日本文学――国際政治と文学の接点をどう考えるか?」を行った。同シンポジウムでの質疑応答においては,帝国主義と移動の表象に関するフランスとの類似性や,国際的なプロジェクトの必要性の指摘など,貴重かつ示唆的な意見をもらった。また,パリにあるフランス国立図書館において日本語文献に関する調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
引揚・復員および共産主義言説に対するGHQ/SCAP検閲の実態を調査し,その研究成果について,国際シンポジウムにおいて発表することができたから。国際ワークショップにおいては,フランスにおける日本文学研究者から貴重な意見を頂けた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に記述した五ヶ年の計画に従い,日本文学・文化に対してGHQ/SCAP検閲および東西冷戦が与えた影響を調査し,その結果について,学術論文,学術書(共著)で発表を行ってゆく。
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Causes of Carryover |
研究計画に従い,国立国会図書館(東京本館)憲政資料室に所蔵されているゴードン.W.プランゲ文庫を調査するために,旅費として使用する。また,必要な文献を購入するための予算とする。
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Research Products
(1 results)