2022 Fiscal Year Research-status Report
近代島根歌壇の研究―恒藤恭の短歌関連資料と山陰『明星』歌人資料を活用して―
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22K00324
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
奥野 久美子 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (50378494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山村 桃子 島根県立大学, 人間文化学部, 准教授 (90642520)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 近代島根歌壇 / 恒藤恭 / 山陰「明星」歌人 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間一年目であった本年度は、まず、2022年7月16日に、大阪公立大学と島根県立大学をオンラインでつなぎ、公開研究会を行った。研究協力者の芦田耕一氏(島根大学名誉教授)による講演「近世後期の出雲歌壇」により、近代につながる近世後期の山陰歌壇の様相を学び、そのほか、研究代表者の奥野久美子(大阪公立大学)より本研究課題についての概説、研究分担者の山村桃子氏(島根県立大学)より、島根県立大学が所蔵する山陰「明星」歌人資料の「銀鈴」をめぐって報告があった。質疑も活発に行われ、本研究課題のスタートに有意義な会となった。 資料整備では、山村桃子氏(島根県立大学)を中心に、島根県立大学が所蔵する山陰「明星」歌人資料のうち、雑誌「卯の花」「ミチシホ」「白虹」「白檀弓」(以上、奥原碧雲旧蔵資料)と、「彗星会歌稿集」(河野翠瀲旧蔵資料)ほか計7点の資料をデジタル化した。資料名をあげた5点の資料については、島根県立大学図書館ホームページにて公開している。一点ものの資料や、他機関には所蔵のない稀少な資料も多く、公開することで研究の進展が期待できる。さらに、山陰「明星」歌人資料のうち「銀鈴」「ミチシホ」「白檀弓」の短歌・俳句のデータ入力を行い、検索可能にして今後の研究のための整備をした。 山陰「明星」歌人資料を用いた具体的な研究成果としては、山村桃子「〈資料紹介〉雑誌『銀鈴』と杉浦非水書簡」(「島根国語国文」14号 2022年9月)がある。 また、大阪公立大学・恒藤記念室所蔵の山陰関係資料のうち、恒藤(井川)恭の島根一中時代の「日記」(明治37年前半)を、研究代表者の奥野久美子と、研究協力者の宍倉忠臣ほかが共同で翻刻校注し、「恒藤恭 島根県立第一中学校時代の日記(「井川日記」)明治三十七年前半(一月~六月分)翻刻と注釈」(大阪公立大学史紀要」1号 2023年2月)として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記した、年1回の研究会開催を実行し、有益な成果を得たほか、研究代表者、研究分担者ともに、研究課題の対象である資料を用いて資料紹介の論文や翻刻解題という研究成果を計2本、刊行することができたため、研究は概ね順調に進展していると考えている。 島根県立大学が所蔵する、稀少な山陰「明星」歌人資料のデジタル化を着実に進めることができ、新規公開資料を5点、同大学図書館ホームページで公開できたということも、学界にとっても大きな成果である。今後、本研究課題の関係者以外からも、広く研究活用されるものと期待される。また山陰「明星」歌人資料のうち「銀鈴」「ミチシホ」「白檀弓」の短歌・俳句のデータ入力を行い、今後の研究のための整備をしたことも成果であり、これらのデータについては、ほかの資料からのデータ入力も拡充し、公開環境が整えば、データベースとして公開することも今後検討する。 ただし、資料のデジタル化に関しては、大阪公立大学の恒藤記念室が今年度前期は大学統合にともなう諸事情により閉室していたため、恒藤記念室資料のデジタル化についての相談はほとんど進められなかった。この点については、次年度以降に検討していく予定である。 上記の状況から、本研究課題は一年目としてはおおむね順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究期間の二年目となる2023年度には、引き続き島根県立大学の山陰「明星」歌人資料のデジタル化を進める。これについては具体的に対象資料も決めており、予定に従って着実に進める。 また2023年8月に、島根県立大学にて、資料の実物の閲覧・調査と、研究会開催を目的とする会合を予定している。島根県外の研究協力者も集い、資料の実物を見ての調査と、対面での研究会開催となる見込みである。そこでの研究成果は、参加者各自で論文等として発表できればと考えている。 大阪公立大学では、恒藤記念室資料のうち山陰関係資料をデジタル化することを検討し、具体的に作業を進めていく。また、山陰関係資料として明治37年の「井川日記」の後半を翻刻校注する作業は続け、掲載誌(紀要)の編集の都合により2024年度の刊行をめざす。 また大阪公立大学恒藤記念室資料については、すでにデジタル化している資料のデータ入力も進める。データ入力を進めている島根県立大学資料とあわせて、公開方法などの検討もしていく。
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Causes of Carryover |
研究期間中、年に一度開催予定の研究会について、今年度はオンラインで行い、旅費がかからなかったこと、また、大阪公立大学恒藤記念室資料のデジタル化について、今年度前期は同室が閉室していたため、具体的に相談して取りかかることができなかったこと。この2点の理由で、それぞれ旅費とその他費用(デジタル撮影委託費)を予定通りには使用せず、余ることとなった。 次年度には8月に対面での研究会を開催予定なので、旅費を使用することになる。また、恒藤記念室資料のデジタル化も進めるため、その費用として使用する。
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