2022 Fiscal Year Research-status Report
近代漢詩が形成する山陰地域の文化教養環境─漢詩人と官僚・政党政治家の交遊の分析
Project/Area Number |
22K00340
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
要木 純一 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (00230631)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板垣 貴志 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (80588385)
竹永 三男 島根大学, 法文学部, 客員研究員 (90144683)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 若槻礼次郎 / 渡部寛一郎 / 山陰 / 政党政治 / 日本漢詩文 |
Outline of Annual Research Achievements |
前科研に引き続いて、渡部寛一郎文書の整理、読解を通じて、政治家若槻礼次郎が、漢詩文のやりとりを通じて、山陰地方の憲政会(民政党)後援者と連携して、いかに政党政治の基礎を築いたか、を明らかにしていった。毎月1回、本年3月まで、渡部寛一郎文書研究会を開き、日記(くずし字)の解読、日記に記された事件の背景等について、研究者同士で、討論し、共通の理解に達することが出来た。遠方よりの研究分担者、協力者の発表を中心とした特別例会は、もともと年2回、秋と春に行う予定であったが、新コロナがまだおさまらないので、開催は見送った。また、島根県石見地方の、政党政治、地方政治のあり方と主に漢詩を中心として文芸との関りについて、科研メンバー同士の理解を深めた。その成果の一部が、『山陰研究』15号で公開した、「翻刻 渡部寛一郎日記4下」である。私の授業では、学生に希少な漢詩資料の資料整理・データ作成をさせるなどして、地域研究に興味を持たせ、ひいては彼ら自らの研究スキルを磨かせることができた。 新コロナ厳戒態勢の中で、十分な成果があげにくいので、公的出張による調査研究、専門家との討議は見合わせたが、コロナが収まっている時期に、臨時の私的な旅行によって、図書館調査等を行った。 貴重資料や漢文学関係の概説等を購入して、簡単な内容紹介とともに、これらの書物を研究でどのように使うか、また、それらが持つ証拠としての限界性を、院生を中心として、学生、一般人に講じる機会を持っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
月ごとの例会により、渡部寛一郎文書を当初の予定よりも多めに解読した。その一部(渡部寛一郎日記)の翻刻は、 『山陰研究』誌で公開し、詳細な年表や解説を付して、日本漢文学、山陰地域、政党政治等の研究者に、重要な新資料を提供することができた。今年度も新コロナ対応により、特別例会が開けなかったが、Zoom等により、遠隔の科研メンバーや外部の有識者と交流ができ、様々な知見を得ることができた。また、成果のインターネット公開によって、山陰地方の文化遺産を市民に知らせることができたと思う。学生アルバイトを用いて、データベースを作らせる等の計画は、コロナにより一時中断しているが、大学の授業で、学生に山陰の明治初期の漢詩を教え、研究させることによって、若い世代に関心を引き継ぐことができたかと思う。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナ対応により、今年度も前半は月例会がリアルには開けないであろう。その代わりに、メール等の相談により、月一回から二回程度、渡部寛一郎文書の翻刻を進めていく。また、Zoom等により、遠方の研究協力者と、資料読み合わせ、意見交換会を開きたい。後半夏休み以後は、ハイブリッド研究会(近くの研究者はリアルに、遠くの研究者は会場の様子とパワーポイント資料等を撮影配布する)。IT関係の技術は、これから勉強しなければならないが、そのための費用を、今年も見積もるつもりである。今年度も、新規研究協力者を募集し、例会での発表、討議さらには『山陰研究』投稿を通じて、本研究の政党政治方面、山陰漢文学への提言を頂く予定である。 国会図書館等へ直接訪問することは、今年度中は無理なのではないか。代わりに資料、古書を多く購入して、情報を集積することになると思う。渡部寛一郎日記の翻刻に向けて、解読を進める。相変わらず、原稿まとめや校正に手間取るので、秋口までに、完成原稿に近い形にして、『山陰研究』誌上等に発表したい。また、年表、登場人物の簡単な履歴、社会背景等を、注釈の形で、研究協力者大國氏により、別個同誌上に発表していただく予定である。若槻礼次郎や山陰漢詩人の漢詩集を、学生アルバイト等を用いて、データベース化し、人名索引等を付した、翻刻をまずは稿本の形でまとめたい。
|
Causes of Carryover |
予定していた出張が大学の方針で見合わせることになった。
|
Research Products
(4 results)