2022 Fiscal Year Research-status Report
中世南都寺院における仏教史認識の研究―仏教史書と宗教的・政治的活動との相互関連
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22K00353
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
三好 俊徳 佛教大学, 仏教学部, 准教授 (00566995)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 仏教史認識 / 仏教史書 / 南都寺院 / 聖教 / 大須文庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、院政期から鎌倉時代にかけての南都寺院で成立した仏教史書を読み解き、それをもとに南都寺院の通史的な仏教史認識の特徴を明らかにすることを目指すものである。そのことによって、東大寺・興福寺など各寺院における仏教史認識の特徴を明らかにする。そのため、次の2つの研究を実施する。 ①先行する歴史書の利用方法やそれらとの記事の差異を分析する。そのことで、その仏教史書に記される特徴ある記事を明確にする。 ②①で明らかにした特徴ある記事について、南都寺院の聖教や文書に共通する記事がないかを広く調査する。共通する記事があった場合、どのような文脈で、どのように語られているのかを検討する。そのことで、その記事が仏教史書のなかに記される意味を寺院社会の宗教的活動もしくは政治的活動に則して読み解くことができると考えられる。これは仏教史認識を中世寺院の知的体系に位置づけようとする研究でもある。 具体的には、院政期に東大寺で編纂された僧伝資料『七大寺年表』や院政期に興福寺周辺で作成された仏教史書『仏法伝来次第』などを対象として、個々の仏教史書がどのような歴史を語っているのかを分析する。 本年度は、①については、先行研究に基づきながら、『七大寺年表』および『仏法伝来次第』の記事とその典拠と目される資料との比較を行った。 その成果をもとに、②の研究を実施している。特に、三国(天竺・震旦・本朝)の歴史を記す『仏法伝来次第』の天竺部の記述内容と経典との関わりを検討した。その成果は論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的に順調に進めることはできている。『七大寺年表』と『仏法伝来次第』については、大須文庫本の紙焼き写真を入手して活字化されている本文を確認し、原本に基づいた分析を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も計画に基づき研究を推進する。次年度は、特に『七大寺年表』と『仏法伝来次第』について、全体的に他の歴史書との相違点を明確にする作業を行い、その成果を発表することを目指す。 また、大須文庫(名古屋市)などへの資料調査も複数回実施し、関連資料を入手する。
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Causes of Carryover |
本研究を遂行する過程で、大須文庫などでの資料調査を行う計画をしており、本年度も実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響などもあり、次年度に実施することにした。そのための旅費および謝金を繰り越している。次年度は、資料調査を重点的に実施する予定である。
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