2023 Fiscal Year Research-status Report
明清時代の通俗文学における日本、日本人イメージの研究
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22K00363
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
遊佐 徹 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (60240157)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 明清通俗文学 / 倭寇小説 / 倭寇戯曲 / 日本イメージ / 日本人イメージ / 異文化交流 / 日中交流史 / 卑弥呼 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題「明清時代の通俗文学における日本、日本人イメージの研究」(基盤研究(C)22K00363)の研究2年目は、研究1年目に進めた明清期の通俗小説を通覧して収集した倭寇に関する記述および日本・日本人イメージに関する記述、そして同時に進めてきた明清戯曲作品を対象にした同様の作業によって見出された資料に基づき、個別論文の執筆に着手し、研究2年目期間に論文として公開したものには「卑弥呼の残像(上)――明清通俗文学作品に描かれた日本人女性と日本イメージ――」(『岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要』第57号)がある。現在の日本においては、まさに「国民的謎」として誰ひとりその名を知らぬものがない人物であろう卑弥呼が、近世の中国においても通俗文学のなかで強烈なイメージ(中国を侵略するもしくは中国を諌める女首領)を発揮していたことは、従来全く指摘されたこのとない大きな発見であった。これまで明清通俗文学作品に登場する日本人の代表格は平秀吉(秀吉は明智光秀を討ってのち一時期「平」姓を名乗っている。また万暦帝が発した秀吉を日本国王に封ずる誥命も宛名は平秀吉となっている。加えて「関白」という称号で秀吉を指示すバージョンも多い)であることが指摘されてきたが、このたびの調査によって、中国近世における通俗的な日本・日本人イメージがバリエーションに富むものであることが判明した(また、あえて付言すれば、あまたある我が国の卑弥呼に関する歴史学、考古学的研究に文学の立場から一石を投じる意義も見出せる)。該論文については上編を継ぐ下編を用意している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最大の理由は、昨年4月に所属する岡山大学の副理事(研究公正・総合知担当)に就任するとともに所属部局の大学院社会文化科学研究科長も兼任するなど学内行政にエフォートを割かざるを得ない状況が生じたことである。また、新型コロナウイルス感染症は研究の妨げではなくなったものの、日中関係の悪化により中国での資料調査を断念したことも研究の理想的な進捗を妨げた。この状況を打開するために大学院生をRAとして雇用し資料整理を図るなど工夫を凝らしてはいる。
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Strategy for Future Research Activity |
先ずは「卑弥呼の残像(下)――明清通俗文学作品に描かれた日本人女性と日本イメージ――」を公刊し、2023年度にまとめ切れなかった明清時期における「神仙・異域的イメージ」、「唐宋期の新古典的イメージの継承と変遷」について個別論文を執筆するとともに、「日本、日本人に対するリアルイメージとバーチャルイメージ」、「日本語への関心」、「日本、日本人イメージの近現代中国への継承と変遷」について考察し、まとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行が終息したものの日中関係が好転せず、実施予定であった中国における資料調査が滞ってしまったことが最大の要因である。2024年度は可能な限り調査を実施したい。
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