2023 Fiscal Year Research-status Report
Study of modern China/Japan images by cross-border Chinese female authors: focusing on Ling Shuhua
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22K00370
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
阿部 沙織 拓殖大学, 外国語学部, 准教授 (20822745)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 凌叔華 / 松岡洋右 / 華人女性作家 / 中国アイデンティティ / 日中画壇の交流 / 抗日文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年12月におこなった学会発表(お茶の水女子大学中国文学会12月例会「凌叔華『中華児女』の日本人表象を再読する:松岡洋右との交流を参照軸として」)を踏まえて、『野草』111号(2024年9月)に学術論文「凌叔華「中国児女」の日本人表象を再考する : 松岡洋右との交流を参照軸として」を発表した。同論文においては、当時、外務省対中国文化事業であった「日華(中国)絵画聯合展覧会」に代表される日中画壇の交流や、北京画壇の自主的な取り組み「中国画学研究会」の画会が、凌叔華と松岡洋右を結び付けたと考えらることを論証した。また、後年凌叔華の残した抗日を題材とする中編小説「中国児女」に表出する、特異な日本人兵表象からは、戦時下に国家のはざまで揺れ動く作家のアイデンティティの問題を指摘した。 2023年8月には、中国文芸研究会夏合宿企画「民国期小説を読み直す」において、許地山「春桃」の書評において、中国国内ではあるが村落共同体から都市への移動により封建的家庭を脱して新たな家族像を形成しようとする女性像を指摘し、本研究の女性の移動とアイデンティティの問題につながる中国現代文学の文脈を指摘できた。 2024年3月には、ワークショップ「国家、恋愛、あるいは性別──民国期文学をつらぬくもの 」に参加し、口頭発表「「結婚のための結婚」:閨秀作家凌叔華のロマンチック・ラブ表象 」をおこなった。凌叔華の初期作品におけるロマンチック・ラブ表象が、キャサリン・マンスフィールドの作品に強く影響を受けたものであることを両作家の個別の作品の比較から検討し、また後期作品にその傾向が薄まることと併せて、近代西洋的な恋愛観から、中国の封建家庭で得た結婚観へと揺れ動いていく作家のアイデンティティが読み取れることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2023年度も、コロナ禍の余波により中国出張が叶わず、北京に所有者がいる松岡洋右の凌叔華宛書簡の閲覧交渉や、その他の華人女性作家(徳齢等)についての資料調査を実行することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、中国に渡航し資料調査を進める。 このほか、徳齢をはじめとする華人女性作家について調査・研究を進め、凌叔華につらなる華人女性作家の系譜について研究を進める。
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Causes of Carryover |
2023年度には中国への出張を予定していたが、コロナ禍の余波で出張計画が順調に進まず、実行に至らなかった。そのため海外出張旅費の執行予定分が次年度使用額となって生じた。
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