2023 Fiscal Year Research-status Report
A Stuidy on J. R. R. Tolkien's Creative Process of The Homecoming of Beorhtnoth, Beorhthelm's Son
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22K00376
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊藤 盡 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (80338011)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 未刊行考察発見 / 研究協力承諾 / 群像劇的ヒロイズム / 口頭発表 / 現地手稿調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度報告事項は3点①オクスフォード大学ウェストン図書館でのトールキン手稿現地調査。②①に基づく日本中世英語英文学会全国大会での研究成果の口頭発表。③The Battle of Malden, together with The Homecoming of Beorhtnoth (HarperCollins, 2023年)の編著者Peter Grybauskasとの研究協力。 ①2023年8月22日から9月1日オクスフォード大学ウェストン図書館で現地資料調査を行う。MS Tolkien A30/1, fols.107-114に古英詩の翻訳に関する未刊行考察の調査、記録が出来たことは重要である。報告③と関連して、本研究活動において、これまで未知であった学術的考察が発見されたと断言してよい。しかし、円安と英国での価格上昇により、予算の関係上、当初の年2回の訪英の予定が1回のみに限られたことは大きな痛手であり、研究活動の遅滞を招いた。 ②科研費受給以前に複数年かけて進めてきた調査と①の調査結果を合わせて、2023年12月1日(土)に早稲田大学(早稲田キャンパス)で開催された第39回日本中世英語英文学会全国大会に於いて、「J. R. R. トールキンによる古英詩『モールドンの戦い』解釈と現代英語訳に見られる群像劇的ヒロイズム」と題する口頭発表を行った。発表後の質疑応答および懇親会での情報交換により、研究成果を学会内に還元した。 ③今年度6月に刊行されたGrybauskasの編纂した刊本は、本研究の内容と一部重なる部分を持つが、校訂されたThe Homecoming of Beorhtnothは、学術的には不完全であることが判明した。著者Grybauskasを彼の指導をしたVerlyn Fliegerから紹介され、メイル交信を行い、今後の本研究の協力者となることを要請し、快諾された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
円安と英国の物価高騰により、本来予定していた年2回の訪英現地調査を1回に減じざるを得なかったことが主な理由である。研究費申請をした当時に比べ、想定外の円安の進行は、現地での物価高や宿泊費高騰に加えて予算を圧迫している。 その一方で、米国研究者Peter Grybauskasが、本研究の題材のひとつであるJ. R. R. Tolkienによる古英詩『モールドンの戦い』現代英語訳を出版したことは、本研究の学術界への貢献を大きく減じることとなった。 同時に、Grybauskasの業績ではまだ扱われていない点が明確になったことで、本研究の目標の輪郭が明確になったことは大きな収穫である。 計画には含まれなかったGrybauskasとの研究協力が新たに生まれたことは、研究の前進と発展であると同時に、計画の見直しと遅れを促すこととなったことの一因でもある。
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Strategy for Future Research Activity |
円安に加え、滞在費を含む国外の物価高騰は今後も進行すると予想されるため、残りの予算執行については、当初の計画を見直し、英国への訪問を一度、米国への訪問を一度に回数を減じて研究を推進することとなる。 一方、Grybauskasとの研究協力を今後進めるため、訪米の際には、彼との対面会議を計画している。 最終的に、次年度内の学会での口頭発表を断念し、その代わりに研究結果の一部を論文出版として公開することとする。
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Causes of Carryover |
英国への渡航費および物価高騰により、訪英現地調査を予定していた2回から1回に減じたため。未使用額については次年度の旅費に充当する。
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