2022 Fiscal Year Research-status Report
Dialectic of Friendship: Individualism and Empathy in 19th-Century American Literature
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22K00402
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山口 善成 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (60364139)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 共感 / 個人主義 / アメリカン・ルネサンス / ユートピア / アソシエイショニズム / 共同体主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究計画の一つはアメリカ超絶主義者たちの自己信頼思想に、ブルックファーム等、当時の共助の思想と実践の文脈を与え、彼らの友情論がいかに個人主義と共感の文化の相互干渉によって特徴づけられていたかを考察することだった。これについては、まずは勤務校で担当する大学院科目において試論を提供し、ラルフ・ウォルド・エマソンらのエッセイやブルックファーム関連の文献を読み直しながら、受講生と討論を重ねた。ここでの議論は2023年4月22日、第39回日本アメリカ文学会中部支部大会のシンポジウムにおいて「共感の倫理--19世紀アメリカのユートピアニズムと権威主義」と題して発表する(本報告書を執筆段階で発表済み)。これはブルックファーム等、当時のユートピア共同体の思想的背景にアダム・スミスの共感論の痕跡を見出し、そこから19世紀アメリカのユートピアニズムの問題点を考察する論考である。 19世紀からはいくぶんはみ出すが、同じくアメリカ文学における「友情」をテーマにした論考として、中・四国アメリカ文学会第50回大会シンポジウム(2022年6月11日)において、「タヒチのアメリカ人--ヘンリー・アダムズ『アリイ・タイマイの回顧録』における少数民族への同一化と郷愁」を発表した。アダムズは滅びゆくタヒチの少数部族に政治的な影響力を失いつつあった自らの一族の姿を重ねるとともに、より複雑化する19世紀末から20世紀の人間関係・国家関係に対し、親密な友情の物語を提示することでささやかな抵抗を試みた。 その他、片平会夏期研究会プログラムにおいて本研究計画の全般的な構想を発表する機会を得、また別の研究会ではエマ・ウィラードの『アメリカ合衆国史』における視覚イメージと記憶術との関係に関する報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より計画していたアメリカ超絶主義者たちの友情論についての考察を、予定どおり進めることができた。本年度の成果のまとめとして発表する「共感の倫理--19世紀アメリカのユートピアニズムと権威主義」(第39回日本アメリカ文学会中部支部大会、2023年4月22日、中京大学)では、議論の最後にナサニエル・ホーソーンの『緋文字』と『ブライズデイル・ロマンス』を、ユートピア共同体の問題点をそれぞれ別の角度から洞察する物語として論じている。ホーソーンは本科研費研究計画の最終年度に再び取り上げる予定で、今回の議論はそのパイロット版的な役割を担う。2023年度以降の見通しをつけることができたという意味でも、本年度はおおむね順調に研究課題を進めることができたと考えている。 第58回片平会夏期研究会プログラム(2022年8月27日、オンライン)においても、「19世紀アメリカの友情論における個人主義と共感」と題し、本研究計画の全般的な構想をあらためてまとめ、他の研究者と共有できたことは幸いだった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は引き続き、19世紀アメリカの共助の思想に基づく社会運動を通覧、精査し、当時のアメリカ社会を読み解くための新たな準拠枠として、共感の文化を理論化する。ブルックファームの思想と実践、フーリエ主義の流通、および当時の共助の社会運動が分析の対象となる。これらを単なる超絶主義的個人主義のアンチテーゼとしてではなく、それを補完するアメリカ的共感の文化として捉えることが目標である。 さらに研究計画最終年度(2024年度)を見据え、ナサニエル・ホーソーンのテクスト分析を同時進行させる。当初はホーソーンの『ブライズデイル・ロマンス』論を本研究計画の集大成とする予定だったが、2022年度の研究の結果、その他のホーソーン作品も考察する必要があることが分かった。ホーソーンの小説を読み解く切り口として、「共感論」の枠組みの可能性を探りながら、各テクストの分析を進める。
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Causes of Carryover |
2022年度は参加予定だった学会や研究会のほとんどがオンラインで開催されたため、旅費の支出が当初見積もっていた額よりも少なかった。2023年度は新型コロナの感染状況が落ち着き、多くの学会が対面開催になるため、繰り越した科研費を利用して出席する予定である。また、海外学会への参加も2023年度から再開させたい。 また、雑誌論文の公開がいくつか溜まっているので、繰越金は論文公開のための費用(英文校閲など)としても使用する。
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Research Products
(6 results)