2022 Fiscal Year Research-status Report
The Aspects of New Reportage in Late Modernism
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22K00403
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 雄三 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (10273715)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ルポルタージュ / 後期モダニズム / リアリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で明らかにしたい英国後期モダニズム運動の試みが実験的ルポルタージュの執筆実践である。1920年代から30年代にかけて英国本国の地方を旅する紀行の出版がブームとなる。スコットランドの高地地方、アイルランドの離島、ウェールズの炭鉱など、H. V. Mortonをはじめ当時のジャーナリストたちはフットワーク軽く訪れ、見聞した事がらを「読みやすい(readable)」ことばで綴った。その結果、こうした紀行では各地方の「伝統」の捏造や景観の「ピクチャレスク化」が施され、各地方を生きる人びとの営みはかえって見えにくくなる。それに対抗するかたちで、各地方を生きる書き手たちは大手のジャーナリズムに呑み込まれない記述/叙述方法を模索する。より具体的にはアイルランドのSean O’Casey(1880-1964)やヨークシャーのJ. B. Piestley (1894-1984)、スコットランドのEdwin Muir(1887-1959)、ウェールズの B. L. Coombes (1893-1974)のような書き手が、自叙伝と観察録とフィクションを組み合わせた文体を確立してゆく。こうした執筆実践が「紀行」というジャーナリズムの コンヴェンション(慣習)やプロトコール(作法)をどのように変えていったのか。2022年度はこの問いについて重点的に文献の分析・考察を行った。 また1930年代にきわめて影響力の大きかったジャーナル『ピクチャー・ポスト』のアーカイヴを入手し、1930年代の時事的関心の所在について、さまざまな記事を読むことにより大まかな把握ができたと信じる。 他方、同時期に主流派であったリアリズム文学との対比も必要である。同時期のリアリズム演劇、より具体的にはNoel CowardおよびHarold Pinterを中心に文学と社会との諸関係について考察し、その成果を共著書のかたちで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
計画初年度(2022年度)に計画していた海外調査が実施できなかった分を、次年度に実施する。
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