2023 Fiscal Year Research-status Report
When Orientalism Met Modernism: Visions of the Irwin Brothers's Asia
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22K00408
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宇沢 美子 (富島美子) 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 名誉教授 (00164533)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 新聞ジャーナリズム / 新聞コラム / ウォラス・アーウィン / ウィル・アーウィン / マーク・トウェイン / ハシムラ東郷 / 擬似日本人 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はカリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館にて、ウォラス・アーウィン文書の調査研究を行なった。特に1920年代の擬似日本人Hashimura Togoの新聞コラムでこれまで未収集だったもの、1930年代の南太平洋体験に関する書簡、1940年代の戦争詩と批評を中心に作品を収集し、研究の基礎資料を得ることができた。また1900年代のオリエンタリズムの最骨頂であった「蝶々夫人」だが、アーウィンはそうしたセンチメンタルで西欧=男性と日本=女性が織りなす性的オリエンタリズムに対して、批判ではなく沈黙した、と従来考えられてきたが、今回の調査で、アーウィンが蝶々夫人の息子を主人公とする短編作品を書いていたことがわかり、そうした性的オリエンタリズムの路線で人気を博したアーウィンの同時代擬似日本人作家たちに対する彼の姿勢もより鮮明化できる資料を得た。
2023年10月には日本マーク・トウェイン学会の年次大会にて、トウェインとアーウィンのシェイクスピアのバーレスクという仕様による創作連を論じる機会を得た。トウェインのバーレスク諸短編と、アーウィンの1935年の長編小説The Julius Caesar Murder Caseを比べることで、両作家がシーザーを単なる暗殺された英雄というだけでなく、情報を民衆一般に公開した日刊新聞ジャーナリズムの祖とするジャーナリズム史観を共有する点に注目した。
2024年3月には「コラムのアメリカ:アーウィン兄弟の20世紀転換期の新聞ジャーナリズム」と題した講演を慶應義塾大学にて行った。本研究の最終年度である2024年に進める予定の、ウォラスの兄のウィル・アーウィンの研究、特に彼の新聞ジャーナリズム史観について調査研究を進める準備とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1年目にジレット・バージスの資料収集、2年目にウォラス・アーウィンの資料収集をともにカリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館にて順調に実施することができた。研究1年目はコロナ禍もあり、図書館の調査室への入室制限が極めて厳しかったため、当初の計画の順番を変えて、資料が比較的少ないバージスからはじめ、2年目に資料の多いウォラス・アーウィンとした。資料整理をしながら、収集した資料の読解・解釈を進め、同時に2回ほど発表の機会を得て、その成果を一部なりと盛り込むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目は残っている本研究のターゲットである最後の一人ウィル・アーウインの資料収集をスタンフォード大学図書館とイエール大学図書館の双方にて行う予定であったが、円安のため旅費が足りず、日記と書簡を所収するYale大学バイネッケ図書館のみにて行うように変更することを考えている。 すでにアーウィンのメジャーな作品は入手し、現在は彼の雑誌記事を日本で収集できるだけしているところであるが、イエール大学所蔵のウィル・アーウィン資料は、書簡と日記を含み、彼のアメリカ新聞ジャーナリズム史観、第一次世界大戦時の従軍ジャーナリスト経験とそれに根ざした戦争プロパガンダ論を整理する際の必須の資料と考えられる。さらに今年度はウィル・アーウィンの英訳『琵琶記』についても演劇の上演資料をまとめる。中国の京劇がアメリカの舞台に紹介したHarry Benrimo、The Yellow Jacket以降、舞台上に登場する大道具・小道具係(The Property Man)をアーウィンもまた登用しており、Benrimo作品との比較考察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、1年目の資料研究調査がコロナ禍のため日程を当初の予定よりも短くしたためである。その分10万円弱が2年度に持ち越され、2年度の予算消化時に多少減額され3年目に持ち越された。最終年度の旅費として使用する予定である。
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