2022 Fiscal Year Research-status Report
Male Chauvinism and Faulkner in Hollywood
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22K00414
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
森 有礼 中京大学, 国際学部, 教授 (50262829)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ハリウッド映画 / フォークナー / メイル・ショーヴィニズム / 「納屋を焼く」 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究課題に対する当該年度中の研究実績は以下の通り。まずハリウッド時代のフォークナーが関わった映画作品についての情報を確認し、これらを蒐集鑑賞するとともに、当該作品群についての文献調査を行った。併せて、ハリウッド時代のフォークナーの創作についての背景研究及び作品研究を実施し、その成果を論文「「納屋を焼く」における雑種性の政治学―南部における「粗野な民主主義」の誕生を巡って―」として報告した。同論文は、フォークナーの1939年の短編小説「納屋を焼く」について、アメリカ南部における所謂プア・ホワイトの人種表象について分析するとともに、フォークナーが社会慣習から法に基づく自己統治という、民主主義的な社会制度の在り方への移行の可能性を、プア・ホワイトの社会層について見出していたことを論証するものである。本論文によって、ハリウッド時代のフォークナーの基本的な政治的スタンスを確認することが出来、今後のフォークナーのメイル・ショーヴィニズムとの矛盾した関係を論証する足掛かりを形成することが出来た。またこの論文は、同時にハリウッド時代のフォークナーが、一つにはその個人的背景(南部出身の中産階級)に基づいて、またもう一つには彼のメイル・ショーヴィニズムが、ハリウッドの文化的趨勢、即ち極端な男性優位主義的な映画産業の文化的素地と共に、特に第二次世界大戦におけるその政治的プロパガンダを担うことによって、こうした傾向の作品を算出していた可能性を示唆するものである。これに加えて国際シンポジウム「気候について物語を書く」を、中京大学国際英語学部と共催し、菅井大地(愛知学院大)、荒木陽子(敬和学園大)、マーク・ウィークス(名古屋大)及びデヴィッド・ラムジー(ノートルダム清心女子大)を招いて「物語の創作」とそのショーヴィニズム的側面について多元的議論を行ってもらい、今後の研究に関する情報提供を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目標は、フォークナーがそのハリウッド時代(1932年~1945年)において、いかに米国の国策映画に加担することとなったかを、彼が関係した映画及び小説作品の分析を通じて、メイル・ショーヴィニズム(熱狂的男性優位主義/愛国主義)という観点から批判的に論証することを目指すものである。そのため、①フォークナーのハリウッド時代の業績の批評的評価を行い、②それらにおけるメイル・ショーヴィニズムのあり方について実証的に検証し、③アメリカ合衆国におけるそのイデオロギー的布置の原因を歴史的に同定することにある。このうち、①については現在進行中であるが、②については、独立系映画として発表された再現ドキュメンタリー映画Faulkner: The Past Is Never Dead他、最新の批評的調査によるフォークナーの再評価を待つ必要があるが、当初2021年末までに公開予定であった同映画の公開が、2023年3月まで持ち越された。最終的に同映画による批評的調査の実態は2022年度中に確認することが出来たが、そのフィードバックを2022年度中に行うことが出来なかったため、②の作業について実施が遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、具体的にフォークナーが手掛けた映画作品、及びハリウッド時代に執筆された小説群を対象として、フォークナーのメイル・ショーヴィニズムがハリウッド産業と文化的・政治的にどのような関係にあったかを文献実証的に検証することを目指す。これによって、フォークナー作品におけるメイル・ショーヴィニズム野あり方について具体的に批判的検証を行うとともに、それとハリウッド文化との関連性について論証する予定である。 なお、2024年度には、この研究調査を経て、合衆国におけるメイル・ショーヴィニズムのイデオロギー的布置と、そこにおけるフォークナーの役割とについて検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の助成金については、当初研究資料の購入及び海外への研究調査実施のための渡航を予定していた。しかしコロナ禍による渡航制限と渡航費用の高沸により、これを延期して国内における国際シンポジウムの開催による研究情報収集に予算を充てたため、渡航予定の予算が一部余ったものである。
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