2023 Fiscal Year Research-status Report
A Little Book Which Fulfilled a Sacred Promise: In Memoriam Harold Frederick Woodsworth D. D.
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22K00417
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
森田 由利子 関西学院大学, 経済学部, 教授 (60341228)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 寿岳文章 / 『ウッズウォース博士追憶集』 / 向日庵資料 / 書簡 / 葛布 / 紙布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、寿岳文章によって創られた私家本、『ハロルド・フレデリック・ウッズウォース博士追憶集』(In Memoriam Harold Frederick Woodsworth D.D.)に関する散逸した記録と消えゆく記憶を辿り、現状において出来得る限りの形として留めることを目的としている。 まず、2023年度も、前年度同様、同書に関する一次資料や関連情報を蒐集することに注力した。具体的には、『追憶集』を所蔵している国内外の大学図書館へ問い合わせを行い、可能な限り閲覧し、限定番号等の付属情報の確認に努めた。そういった過程の中で、通常の葛布装、クロス装とは異なる「紙布装」の同書を実際に手に取ることができたのは大きな成果であったと考えられる。また、日本国内や海外の古書店から関連書籍を入手し、有益な情報を得ることも継続した。 さらに、向日市文化資料館にて保存されている寿岳文章が所蔵していた様々な布(「向日庵資料」)の検証を行い、『追憶集』の装幀のために使用された葛布の残布を特定することができた。これに関連して、未だ現存している寿岳文章邸を内見する機会を得て、葛布の襖を研究資料として撮影できたことも意義深いものであったと言える。 加えて、『追憶集』に関する考察を深めるため、「向日庵資料」として保管されている寿岳宛ての書簡(主としてWoodsworth博士の遺族や『絵本どんきほうて』の制作依頼者、Carl Tilden Kellerから送られた手紙類)の送付時期や文面を一つ一つ検証する作業を始めた。 同時に、上記の情報蒐集や調査、および一次資料の検証結果に基づき、『追憶集』の翻訳作業も進めていったが、テクストを精緻に読むことにより、最終年度に向けて、取り組むべき研究課題や調査すべき事項をより明確にすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『ハロルド・フレデリック・ウッズウォース博士追憶集』に関する文献蒐集、および、一次資料の検証作業は予定通り行うことができたが、『追憶集』刊行当時を知る関係者の遺族の記憶の文書化については、計画通りに進めることができなかった。聞き取り調査を実施する対象を探し出すことが困難であったためである。また、前年度同様、文献蒐集や研究、調査などを優先したため、『追憶集』の翻訳作業が遅れている。以上のことから「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度において計画通り実施できなかった国内外への出張、および、聞き取り調査を積極的に進めることによって、『ハロルド・フレデリック・ウッズウォース博士追憶集』刊行に関する情報や関係者の記憶をできる限り文書化していきたいと考えている。 まずは、出張先や聞き取り調査の対象をリストアップし直し、実施スケジュールも新たに作成して実行に移していきたい。また、『追憶集』の翻訳原稿の第1稿を早急に完成させる予定である。さらに、継続してきた書誌学的探究の成果や考察を、海外へ発信することをも視野に入れ、研究発表や論文の形にまとめていくことを計画している。
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Causes of Carryover |
聞き取り調査を実施する対象を探し出すことが困難であったため、出張の計画が順調に進まず、次年度使用額が生じた。2024年度においては、作成し直したスケジュールに基づき、調査のための出張を可能な限り実施していきたい。また、翻訳原稿の完成のための校閲費としても使用したいと考えている。
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