2022 Fiscal Year Research-status Report
ユダヤ系アメリカ文学における人種関係の表象―ポスト公民権運動の世代を中心に―
Project/Area Number |
22K00424
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
本田 安都子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (10729312)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ユダヤ系アメリカ文学 / 人種 / ホワイトネス / ユダヤ性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「ポスト公民権運動」の世代に属するユダヤ系アメリカ人作家の作品において、アメリカの人種関係がどのように描かれ、且つ、どのようなユダヤ系の自己像が提示されてきたのか明らかにすることを目的としている。2022年度は、レベッカ・ウォーカーとジェームズ・マクブライドの自伝における人種関係およびユダヤ・アイデンティティの表象に関する考察を行い、その成果は研究発表2件、研究論文1本として公表した。 1. 研究発表①:「移動する“Movement Child”―Rebecca Walkerの自伝におけるmixed-race identityとBlack-Jewish relations」(第38回日本アメリカ文学会中部支部大会シンポジウムにて) 2. 研究発表②:「ジェームズ・マクブライド『水の色』にみるユダヤ・アイデンティティとアメリカの人種関係について」(第34回 日本ソール・ベロー協会大会シンポジウムにて) 3. 研究論文:「排除と包摂―レベッカ・ウォーカーの自伝における ユダヤ・アイデンティティとカラー・ラインの問題」(『福井大学教育・人文社会系部門紀要』第7号) ウォーカーとマクブライドの作品分析は本研究の当初計画には含まれていなかったが、彼らは共に「ポスト公民権運動」の世代に属する作家であるため、彼らの作品を分析することにより本研究を遂行するうえで重要な知見を得ることが出来た。本年度の研究成果は、非白人の「ユダヤ系」作家の視点から描かれたアシュケナジー系ユダヤ人像の分析研究と位置付けられる。いずれの作家の作品においても、アシュケナジー系ユダヤ人は「白人」として表象されるものの、ホロコーストや反ユダヤ主義という文脈において、社会的に周縁化された存在として描かれることが確認された。2022年度の研究で得られた知見を、2023度より実施予定のアシュケナジー系ユダヤ人作家による作品の分析において活かしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、当初計画に含まれてはいないが、本研究を遂行するうえで有用な研究成果3件を残すことが出来た。また、計画書では、2023年度以降に執筆予定の論文作成に必要な文献調査を行うことにしており、それに関してはある程度進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、当初計画では2024年度実施予定であったトニー・クシュナーの Caroline, or Change の分析を行う。2022年度に行ったウォーカーとマクブライドの作品分析において、クシュナーの作品分析に必要と思われる南部ユダヤ人や公民権運動に関する文献調査を行ったので、研究の継続性という観点から、2023年度にクシュナー作品の分析に取り組む方がよいと判断した。よって2023年度実施予定であったアダム・マンズバックの作品分析は2024年度に行うこととする。
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Causes of Carryover |
2022年度は、当初計画に含まれていなかった論文執筆を行ったため、本研究に必要な文献を計画的に購入することが出来なかった。2023年度以降は、研究計画の進捗に合わせて、順次必要な文献を購入していく予定である。
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