2023 Fiscal Year Research-status Report
ユダヤ系アメリカ文学における人種関係の表象―ポスト公民権運動の世代を中心に―
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22K00424
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
本田 安都子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (10729312)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ユダヤ系アメリカ文学 / 人種 / ホワイトネス / ユダヤ性 / 公民権運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「ポスト公民権運動」の世代に属するユダヤ系アメリカ人作家の作品において、アメリカの人種関係がどのように描かれ、且つ、どのようなユダヤ系の自己像が提示されてきたのか明らかにすることを目的としている。従来、社会的他者として語られてきたユダヤ系は、第二次世界大戦以降、白人主流社会の一員としてアメリカ社会に包摂されていくこととなる。そのような社会的状況の中で生まれ育った世代に属するユダヤ系作家が、従来的な社会的他者というユダヤ人像をどのように変容させているのか明らかにするため、トニー・クシュナーとアダム・マンズバックの作品分析を行う。 2023年度の研究成果は、クシュナーの演劇作品に関する研究論文1本とマンズバックの小説に関する研究発表1件である。クシュナーの論考(「想像の友情―Caroline, or Changeにおけるユダヤ人の白人性」)では、公民権運動期の南部を舞台とする戯曲Caroline, or Changeにおけるユダヤ人像を分析し、戦前生まれの世代が、被差別者という自己像を堅持するあまり、「白人」としての特権性に無自覚なユダヤ人として表象され、且つ、そのようなユダヤ人像がアメリカ黒人との関係性の中から浮かび上がるという点を明らかにした。マンズバックの小説に関する研究発表(「周縁性と真正性:Adam Mansbach, The End of the Jewsが描くユダヤ系男性作家の系譜について」)では、本作におけるユダヤ系男性作家の表象を分析した。ベローやマラマッドなど、いわゆる「ユダヤ系文学の黄金期」に属する架空のユダヤ系作家を主人公とする本作においても、アメリカ黒人との対比の中で、「白人」としての特権性と自民族の被差別性の相克という主題が探求されていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、当初計画においてはマンズバックの作品分析のみを行う予定であったが、計画を前倒ししてクシュナー作品の分析を行い、それを研究論文として発表することが出来た。それに加え、マンズバック作品に関する研究発表を1件行うことが出来たので、順調な進捗状況と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年にクシュナー作品の分析を行ったので、2024年度はマンズバック作品の分析に集中し、その成果を研究発表および研究論文として公表する計画である。
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Causes of Carryover |
本研究に必要な文献を計画的に購入することが出来なかったため。次年度は、研究計画の進捗に合わせて順次必要な文献を購入していく計画である。
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