2023 Fiscal Year Research-status Report
Shakespeare and the Global Economy: The Challenge of New Economic Criticism
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22K00438
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
勝山 貴之 同志社大学, 文学部, 教授 (30204449)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | シェイクスピア / 初期近代英国演劇 / グローバル経済 / 新経済批評 / 土地 / 労働 / 貨幣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、科研費のもとでおこなっていた「シェイクスピア作品におけるグローバル経済の影響と物質文化への人々の関心」の研究を更に発展させ、16世紀末に膨張を続ける大都市ロンドンにおいて、経済の隆盛が人々の心性(ある時代のある社会集団に共有されている心のあり方)にいかに影響を与え、その影響が演劇の中にどのような形で表象されているかを探求しようというものである。 文学作品における経済の影響を考察する批評には長い歴史があるが、近年、更に新しい方法論といえる「新経済批評」が注目を浴びている。その背景には、現代社会が従来の生産を基盤とした経済から、サービスや交換(株、投資、債務)を基準とした経済へと変化したことも影響していると考えられる。 シェイクスピア批評に目を向ければ、ここ数年、文学と経済をめぐる議論は益々活況を呈してきている。 2023年3月に、科研費研究・基盤(B)に採択されている「娯楽文化史から捉えるエリザベス朝演劇ー社会変化が生み出す総合エンターテイメント」研究チームの研究会において、「新経済批評」の立場から、「初期近代英国における娯楽としてのショッピングー消費者の登場」と題する講演を行なった。その延長線上の研究として、関西シェイクスピア研究会9月例会において、「The New Exchangeの設立とジョンソンの『エピシーン、または無口な女』ー 消費者の登場と女性の存在 ー」と題する研究発表をし、研究会のメンバーと意見交換をした。 またCraig Muldrewの研究を部分的に修正する意味も兼ねて、「エリザベス朝社会における信用と負債-The Merchant of Veniceをめぐって」を、第41回エリザベス朝研究会にて発表し、研究会メンバーと意見を交わした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年3月に、科研費研究・基盤(B)に採択されている「娯楽文化史から捉えるエリザベス朝演劇ー社会変化が生み出す総合エンターテイメント」研究チームから招待講演の依頼を受けたので、私が研究を進めている「新経済批評」の立場から、「初期近代英国における娯楽としてのショッピングー消費者の登場」と題する講演を行なった。その延長線上の研究として、関西シェイクスピア研究会9月例会において、「The New Exchangeの設立とジョンソンの『エピシーン、または無口な女』ー 消費者の登場と女性の存在 ー」と題する研究発表をし、研究会のメンバーと意見交換をした。またCraig Muldrewの研究を部分的に修正する意味も兼ねて、「エリザベス朝社会における信用と負債-The Merchant of Veniceをめぐって」を、第41回エリザベス朝研究会にて発表し、研究会メンバーと意見を交わした。 これらの研究発表は、加筆修正をほどこした後に、いずれかの学会誌に投稿する予定である。 その他、新経済批評の影響下で執筆されたJane Hwang Degenhardt, Globalizing Fortune on the Early Modern Stage. (OUP, 2022.)の書評を執筆し、これは査読を受けて、日本シェイクスピア学会の学会誌Shakespeare Studies, (62)に掲載された。 以上のことから、当初の計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
エリザベス朝研究会で発表した「エリザベス朝社会における信用と負債-The Merchant of Veniceをめぐって」は、構想中の論文の前半部分であり、後半部ではTimon of Athensを論じる計画である。2024年の夏までに、Timon of Athensの資料収集を終え、秋は論文執筆に取り掛かりたい。この後半部も、いずれかの研究会で発表をし、メンバーと意見交換をして、加筆修正をほどこした後、学会誌に投稿予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のオンデマンド授業から面接授業に戻すのに新たな準備が必要となり、多忙を極めて海外渡航を果たせなかった。このため当初計画していた予算執行が思うように進まなかったことが最大の原因と考えている。2024年度については、海外渡航の可能性を探りながら、まずは論文執筆を中心に進め、業績を確たるものにする予定である。国内における資料収集をしっかり行い、精力的に論文執筆に励みたい。
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Research Products
(3 results)