2023 Fiscal Year Research-status Report
Aspects and Meanings of Collaboration of Texts and Illustrations of the Nineteenth-century Ballad Collections
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22K00442
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Research Institution | Kyushu Women's University |
Principal Investigator |
中島 久代 九州女子大学, 人間科学部, 教授 (90227778)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陣内 敦 長崎短期大学, その他部局等, 教授(移行) (60270120)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 伝承バラッド / バラッド詩 / 挿絵 / 挿絵の黄金時代 / 挿絵付きバラッド編纂集 / 挿絵画家 |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀後半から19世紀にかけてバラッド詩の創作は作品数からも模倣の多様性からも最盛期であ理、またこの時代は挿絵芸術も黄金期を迎えており、2つの芸術領域はバラッド編纂・出版者によってコラボレーションされ、多くの挿絵入りの豪華なバラッド編纂集が刊行された。この事実に基づき(1)画家はバラッドの物語のどの場面を抽出しているのか、場面の選択には理由や傾向が見出せるか、(2)多くの画家たちがバラッドの挿絵に関わった社会的芸術的要因があるのか、(3)購読者・読者は挿絵をどのように理解していたか、(4)テクストと挿絵のコラボレーションはどのような意義を持つのか、の4つの視点から、バラッドの挿絵とテクストのコラボレーションの諸相とその意義を考察することが本研究の目的である。 2023年度は、研究代表者中島は2022年度に作成した「バラッド詩・翻訳・挿絵データ20220506」をベースとして、作品中で挿絵として抽出された場面の調査を継続した。また、イギリスの挿絵文化に関する研究書等から、イギリスの挿絵は伝統的に「挿絵自体が物語を語る役割を持っていると認識されてきた」という芸術鑑賞の傾向を掴んだ。挿絵自体の物語を語る役割がバラッド編纂集にも見られる場合、そのことは何を意味しているのか、テクストと挿絵の関係性をどのように理解することができるか、さらに論考を進める足掛かりができた。 研究分担者陣内は、2022年度から行なっている挿絵技法の時代による変遷の研究を継続した。また、F. J. Child編纂の伝承バラッド詩305篇に基づいて創作した319篇の挿絵は、従来、陣内の個展会場等で展示を試みてきたが、日本バラッド協会第15(2024)回会合において、12の挿絵作品を選定し、中島が音声による解説と場面の朗読をつけて、展示を行った。参加者からは挿絵の意義を再考するきっかけとなったとの声が寄せられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023(令和5)年の研究計画の話し合いにおいて、研究代表者と研究分担者は主として次の4つの内容をそれぞれ遂行することとした。 (1)代表者は、日本バラッド協会HP掲載332点の挿絵画家と背景に関わる資料より挿絵が物語テクストのどの場面をピックアップしているのか、それらのピックアップに共通性・相関性が見られるのかの考察を継続する。(2)代表者は、イギリスの挿絵の物語性等に関する先行研究から、バラッドの挿絵の役割の考察を深める。(3)分担者は、挿絵技術の変遷をまとめ、挿絵の黄金時代にバラッドの挿絵に用いられた技術に特色が見られるのかについて文献調査を継続する。(4)分担者は、挿絵の物語性について自作品で読者・鑑賞者の反応を確かめるために、伝承バラッドの挿絵の展示を試みる。 これらについて、(1)、(2)、(3)は遂行途中である。(4)については共同で展示の試みを行った。そのため、やや遅れている状態と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2024(令和6)年度の研究計画の話し合いにおいて、「現在までの進捗状況」に記した2023(令和5)年度研究の方向性の4つの内容を継続することとした。 (1)代表者は、日本バラッド協会HP掲載332点の挿絵画家と背景に関わる資料より挿絵が物語テクストのどの場面をピックアップしているのか、それらのピックアップに共通性・相関性が見られるのかの考察を継続する。(2)代表者は、イギリスの挿絵の物語性等に関する先行研究から、バラッドの挿絵の役割の考察を深める。(3)分担者は、挿絵技術の変遷をまとめ、挿絵の黄金時代にバラッドの挿絵に用いられた技術に特色が見られるのかについて文献調査を継続する。(4)分担者は、挿絵の物語性について自作品で読者・鑑賞者の反応を確かめるために、伝承バラッドの挿絵の展示を試みる。 特に(4)については、代表者と分担者で協力して、展示機会を増やしていくこととした。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は2つある。1つは、洋書購入の場合、見積もり時と支払い時でドルから円換算した金額が異なっていたためである。もう一つは、画材代などが企画時点より少ない購入で済んだためである。次年度はこの金額を引き続き洋書購入と画材の購入に充てる予定である。
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Remarks |
陣内敦 グループ展「磁場展」(2023年 佐賀県立美術館) 個展「陣内敦展」(2024年 ギャラリープチフォルム)
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