• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2023 Fiscal Year Research-status Report

Studies on the love letters of Paul Valery

Research Project

Project/Area Number 22K00449
Research InstitutionKobe University

Principal Investigator

松田 浩則  神戸大学, 人文学研究科, 名誉教授 (00219445)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywordsポール・ヴァレリー / エロス / カトリーヌ・ポッジ / 手紙 / 日記
Outline of Annual Research Achievements

本研究では、パリのフランス国立図書館に所蔵されているポール・ヴァレリー(1871-1945)の『魅惑草稿』(Manuscrits des Charmes)と『カトリーヌ・ポッジ文書』(dossier de K.)などの詳細な調査と読解の試みを通して、ポッジとの出会いをきっかけとして、1920年以降のヴァレリーのエクリチュール(書き方)がどのように劇的に変化したのか、知性とエロスの相克が、それまでのヴァレリーのエクリチュールのあり方にどのような根本的な問いを投げかけ、新しいエクリチュールの創出に繋がったのかを究明していく。換言すれば、ヴァレリー自ら「知的絶対主義」と呼ぶ「ムッシュー・テスト」を一頂点とした青年期のエクリチュールが、ポッジとの経験を経ることによって、どのような戦術の練り直しを迫られたのかを明らかにする。
従来、ポッジがヴァレリーに及ぼした痕跡としては、『魅惑』に収められている「ナルシス断章」において、それまでの詩の流れを断ち切るように突如出現する男女の交わりを示唆する場面を指摘する研究者が多かった。しかし、『魅惑』の草稿をより詳細に読んでいくと、「アポロンの巫女」「蛇の素描」「死をいつわる女」、その他の詩篇の中にも、ポッジの影が差していることが草稿段階から確実に指摘できる。しかも、そこには、エロスを極力排したムッシュー・テスト的なエクリチュールを投げ捨てて、もうひとつ別のエクリチュールへ向かおうとする意志が明確に出ている。こうした変化を分析することにより、これまで支配的だった「地中海的明晰さを備えた知識人」というヴァレリーの姿を一新できるように思われる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

コロナ禍によりフランスへの出張はできないでいたが、2024年3月に一週間ほどコート・ダジュール大学で資料を収集することができた。全体的には順調に研究計画は進んでいる。とりわけカトリーヌ・ポッジの日記とヴァレリーへの手紙の解読がかなり進んだので、1920年代のヴァレリーの活動を明確にとらえられるようになってきた。資料の収集や解読とともに新しい知見も得られた。また論文の執筆もほぼ順調に進んでいるので、いずれ単行本として出版したいと考えている。

Strategy for Future Research Activity

本研究の目標を達成するために、まずは、コート・ダジュール大学とフランス国立図書館が所蔵しているヴァレリーの『カトリーヌ・ポッジ関連書類』を精査し、数次にわたる加筆修正のある原稿をデータベース化していく必要がある。そのうえで、可能な範囲内で日本ヴァレリー研究会のWeb上での公開を行う予定である。それと並行して、『魅惑』とほぼ同時期に書かれた1920年代のヴァレリーの作品、とりわけ詩的散文や対話形式の作品にも注目しつつ、知性とエロスの相克がヴァレリーに投げかけた問題の広がり全体を考察対象とした研究論文を数本執筆し成果を公表する予定である。また、ヴァレリーにエクリチュールの戦略変更を迫ったカトリーヌ・ポッジと彼との往復書簡集やポッジの日記がヴァレリーの作品制作の内情を明らかにしていることを考慮して、論文の執筆に最大限取り込んでいく予定である。

Causes of Carryover

コロナ禍のせいでフランスへの資料収集がしばらくできなかったということが予算執行の進まなかった最大の理由であるが、また、2024年度3月末を期限とするもうひとつの科学研究費(19K00474)の使用を優先したこともその理由である。幸い、コロナの心配はさしあたり減少したので、今年度中に再度渡仏し、資料の収集活動を再開する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2024

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] ヴァレリーあるいはロヴィラ夫人への恋文2024

    • Author(s)
      松田浩則
    • Journal Title

      シエステ

      Volume: 3 Pages: 45-53

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2024-12-25  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi