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2022 Fiscal Year Research-status Report

Study of the metafictinal remarque in the troubadours' poetry

Research Project

Project/Area Number 22K00458
Research InstitutionWaseda University

Principal Investigator

瀬戸 直彦  早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30206643)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywordsトルバドゥール / 写本 / 写字生 / オリジナル / 南フランス / 中世 / オック語
Outline of Annual Research Achievements

「中世フランス抒情詩における「メタ文脈」の研究」と題した3年間にわたる研究の初年度であった。とくに今年度は南フランスのトルバドゥールによる抒情詩における語り手がその語りかける相手(聴衆・読者)を意識した上での「文脈」をとらえる作業を,とくに写字生の筆者作業を念頭に置いておこなった。

具体的に述べよう。トルバドゥールの1206作品を収録するメジャーな Cという写本がある。また,原写本はいまでは散逸してしまったが,種々の「紙」による写本でほぼ再建できる a (ベルナルト・アモロスというがある。かれらの,元本を書写する際の姿勢がきわだって相違しているのである。後者については,ベルナルトによる全体の序文がのこされており,写字するときの Correctores immo corruptores (意訳をほどこすと,テクストの「訂正者だって?いや破壊者だよ」)といういわば彼のモットーが強調されている。いっぽう前者においては全体の序文は付されておらず,写字生の姿はベルナルトの場合と異なり,一見したところ見えない。しかるに最後のトルバドゥールといわれる,写字生の同時代人でおそらくは友人であったギラウト・リキエルの作品を収録する部分では,その詩人の「元本」をその構成も年代順も含めて一言一句そのまま収録したとある。これだけを見ると,ベルナルトの態度と同じであるが,写本冒頭に付された目次と索引に作者名の訂正(の可能性)が明示されていたり,rubrique と呼ばれる各作品冒頭の朱字(「誰誰の作品は以下に始まる」)が多くみられ,かつ,テクスト自体を勝手に直してしまうC写本独自の態度が観察できる。中世南フランスにおける二人の写字生の対照的な態度を比較してみることができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ギラウト・リキエルのおもにC写本に収録されたパストゥレルにおける「メタ文脈」から出発した本課題であるが,そのC写本の編纂の方法(写字生の原テクストへの接し方)においても,「メタ」な文脈が看取できるのではないかと考えるようになった。それに対して,ベルナルト・アモロスの態度は,いわば声高に,原テクストの改変を非難しており,じじつその伝える内容は,おそらくオリジナルとの違いの目立たないものであった。この2写本の相違については,私は「寡黙と饒舌ー中世南仏の二人の写字生」と題した論文ですでに1998年に問題提起をおこなっていた。あらためて新しい視点から,より精密な分析をもとに捉えなおすことができるようになったと考えている。

Strategy for Future Research Activity

2023年9月に,ドイツのミュンヘン大学において開催される「第14回国際オック語オック文学国際学会」において,この問題をあらためて指摘する予定である。C写本のギラウト・リキエルの部の前書きの解釈は,Bertolucci-Pizzorusso によってかなり詳細に検討されている。近くは2014年に,Borghi Cedrini とWalter Meligaにより,a 写本の序文の読み直しがなされている。私のこの問題提起が,それらの業績を包括し,かつ補完するものとなることを期待している。そして本研究の目的である「メタ文脈」という概念の捉えなおしを,写字生による俗語文学のオリジナル・テクストへの接し方の相違から再検討することができればと思う。「テクスト改変者イコール改悪者」という見方は,神という絶対的な著者 auctoritas のいる「聖書」テクストの校訂作業に起因するものであり,俗語のいわば「流動する」テクストに適用できるとは限らないからである。

Causes of Carryover

必要な書籍が年度内に到着しなかったためで,翌年度の国際学会の費用に充填する。

  • Research Products

    (2 results)

All 2023 2022

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Journal Article] ギラウト・リキエルのパストゥレルに流れる「メタ文脈」-第5歌(PC 248, 22)を中心に2022

    • Author(s)
      瀬戸直彦
    • Journal Title

      Etudes francaises 早稲田フランス語フランス文学論集

      Volume: 29 Pages: 23-40

  • [Presentation] Volubilie prudente ou audacieuse sobriet des chansonniers occitans a et C2023

    • Author(s)
      Naohiko Seto
    • Organizer
      XIVe Congres de l'Association Internationale d'Etudes Occitanes
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2023-12-25  

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