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2023 Fiscal Year Research-status Report

Study of the metafictinal remarque in the troubadours' poetry

Research Project

Project/Area Number 22K00458
Research InstitutionWaseda University

Principal Investigator

瀬戸 直彦  早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30206643)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywordsトルバドゥール / 写本 / 写字生 / オリジナル / 南フランス / 中世 / オック語
Outline of Annual Research Achievements

「中世フランス抒情詩における「メタ文脈」の研究」と題した3年間の研究の2年度目であった。今年度は予定していた「第14回オック語オック文学国際研究学会」での研究発表が中心となった。この学会はミュンヘン大学で9月11-16日にかけて開催され,私は Volubilite prudente ou audacieuse sobriete des chansonniers occitans "a" et "C" というタイトルでフランス語にて発表した(アクサン記号略)。
中世抒情詩を収録する写本のうちで,とくに写字生の作業の方針が記されている前書きの付された2写本を俎上にのぼせて,前者(a)を「慎重な饒舌」,後者(C)を「簡素な大胆さ」と形容し,かれらの筆写するテクストを特徴づけてみた。a 写本はベルナルト・アモロスという人物の饒舌な序文があり,その序文を子細に検討すると,自分こそもっともオック語詩に造詣が深いが,それでも訂正など加えずオリジナルを一字一句尊重したと述べていることがわかる。いっぽうC写本は,写字生の序文こそ付されていないが,トルバドゥールのギラウト・リキエルの部で自分(写字生)はその作品に全然手を加えずに筆写した,と断言する前書きが付されている。ところが,その写本のとくに古典期のトルバドゥールのテクストは,写字生が大鉈をふるって改変し,いわばより分かりやすい「読み」lectio facilior を提供している箇所が散見される。両者の心性の相違を浮き彫りにしてみた。
発表後には,ドミニック・ビイイ(トゥールーズ大学),ステファノ・アスペルティ(ローマ大学),フランチェスコ・カラペッツァ(パレルモ大学)といった諸先生に好意的にコメントをいただくことができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

両写本にかんしては,19世紀後半以来さまざまの研究がなされてきた。新しい研究動向としては,写本の伝えるテクストのみを対象とするのではなく,作品のいわば「入れ物」であるところの写本の形態,収録順序,前書きや題目といった,いわば「メタ言語」的特性を考慮に入れる態度が顕著になってきている。とくに IN TAVULARE というオック語圏,オイル語圏,ガリシア・ポルトガル語圏の中世抒情詩をいわばカタログ化したシリーズが21世紀に主としてイタリアを中心に推進されつつある。これは19世紀のドイツでグスタフ・グレーバーが提唱し,ダルコ・スィルビオ・アヴァッレに引き継がれた研究方法の精密化の試みである。
私は1998年に日本語で発表した「寡黙と饒舌」という論文において,すでにa写本とC写本の序文について多少とも論じておいたが,今回の研究はそれをあらたな視点から,その後の私の,そして海外の研究の進展を踏まえて,とらえようとするものである。
a写本については,Luciana Borghi-CedriniとWalter Maligaによる詳細な報告と研究(2014, 2020)が,C写本については,Anna Radaelli(2005)による報告がなされている。しかし両写本の写字生による序文についての考察は,なされていなかった。今回の研究発表はそこに力点をおいたものである。

Strategy for Future Research Activity

ミュンヘン大学での国際学会では,トゥールーズ大学のビイイ教授,パリの高等実習研究員のファビオ・ジネリ教授と久しぶりに直接にコンタクトをとることができた。ジネリ先生は多忙のため,予定していた日本でのセミナー開催は時期的に困難になっているようである。ビイイ先生からは Condordance de l'Occitan Medeival (COM) の第3巻がインターネットで参照可能なTMAO (Tresor Mnauscrit de l'Ancien Occitan)に実質的に含まれていることを教えていただいた。
ギラウト・リキエルのパストゥレルだけではなく,ギラウトの1万行にも及ぶ他の作品群において,また他の作者たちの抒情詩群において,メタ文学の視点からどのようにとらえることが可能かを,主として写本の構成や前書きの悉皆調査から具体的に,そして本研究課題のまとめとして提出できるようにしたい。
また,従来より私がおこなってきているトルバドゥールのC写本(BNF, fr. 856)の研究を,これまでの「内的批判」,つまりそのテクストの他写本の読みとの比較ではなく,主としてその受容の面から(ある意味での,「外的批判」として)検討を加えてみる。すなわち,現在のフランス国立図書館に収納されるまでいかに読まれ,扱われてきたかについても探ってみる。19世に碩学ポール・メイエルが中世南仏物語『フラメンカ』の写本に加えたような2度にわたる校訂の試みと,読めない箇所への薬品処理(そして結果としてのテクストの毀損)という「受容」の試みをCという大冊においても考察してみようと考えている。

Causes of Carryover

必要な書籍資料が年度内に到着しなかったためで,次年度の研究費用に充当する。

  • Research Products

    (3 results)

All 2024 2023

All Journal Article (2 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results,  Peer Reviewed: 2 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Journal Article] Volubilite prudente ou ausacieuse sobriete des chansonniers occitans "a" et "C"2024

    • Author(s)
      Naohiko Seto
    • Journal Title

      Actes du XIVe Congres International de l'AIEO (Munich, 11-16 septembre 2023)

      Volume: 1 Pages: -

    • Peer Reviewed / Int'l Joint Research
  • [Journal Article] La relecture de la derniere Pastourelle de Guiraut Riquier (PC 248, 22) : une ambiguite volontaire2023

    • Author(s)
      Naohiko Seto
    • Journal Title

      Revue d'Etudes d'Oc

      Volume: 176 Pages: 137-165

    • Peer Reviewed / Int'l Joint Research
  • [Presentation] Volubilite prudente ou ausacieuse sobriete des chansonniers occitans "a" et "C"2023

    • Author(s)
      Naohiko Seto
    • Organizer
      XIVe Congres International de l'Association Internationale d'Etudes Occitanes
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2024-12-25  

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