2022 Fiscal Year Research-status Report
移民作家のフランス象徴主義――マラルメからジャン・モレアスへ――
Project/Area Number |
22K00468
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
立花 史 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (20749551)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ジャン・モレアス / ジャック・デリダ / 古典人文学 / 移民 / 火葬 |
Outline of Annual Research Achievements |
22年度は、フランスの世紀末からベルエポック期の文化についての調査に多くの時間と労力を費やし、マラルメやモレアスと交流のあった作家や画家についてと欧州における古代と近現代における葬墓制(とりわけ火葬)についての知見を得るため、国内の美術館・博物館を回った。 その成果とともに、申請者が編者を務めている論文集『マラルメ新世紀』(水声社から23年度刊行予定)の序文執筆準備のサーベイ作業をおこなったほか、同年度においてすでに、翌23年5月における「ポスト=ヒューマン時代の起点としてのフランス象徴主義」の共同研究会での本科研費課題の成果発表のスケジュール(「1890年代におけるモレアスの象徴主義」、発表70分、質疑30分)が決まっていたので、そのための準備もおこなった。 また、申請者の本来の研究が、19世紀後半のフランスにおける(教育制度としての)古典人文学から現代人文学への変容という時代背景にマラルメを位置づけるものであったことから、フランス近現代におけるギリシア文化やラテン文化のプレゼンスはたいへん重要な関心領域である。その研究の過程で、以前から依頼されていた『デリダ読本』における哲学者ジャック・デリダと文学との関係を扱う原稿依頼に対して、申請者が研究してきたフランスにおける「人文学」という概念の含みが、デリダの思考にどう反映しているかについての論考を「ジャック・デリダにおける幸福の人文学」(仮題)と題して、22年度2月に入稿した(刊行は23年度予定)。 さらに、3月には大阪公立大学UCRCでの活動報告として、移民文学における女性や家庭の表象についての発表をおこなった。これも、戦後文学についての発表ではあるが、本科研費課題におけるモレアスやロマーヌ派と第一波フェミニズムとの関係に関する研究の準備の一環である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は、22年度後後半に、フランスおよびギリシアへの海外出張を検討していたが、Covid-19の影響と思われる価格高騰にくわえ、フランスでの大規模なストライキのため、見合わせざるを得なかった。その点についてだけ、若干の遅れがある。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研費研究のおかげで、19年度から始めている若手研究に対しても相乗効果があって古代ギリシア・ローマ文化への知見が深まった一方で、23年度は若手研究の最終年度であるため成果をまとまった形で提示したいと考えているので、来年度はそちらと重複する部分(とりわけモレアスよりもマラルメの部分)についての研究を集中的におこなう予定であることから、フランスやギリシアへの海外出張は再来年度に延期する可能性が高い。その代わり、若手研究の成果のとりまとめに負担のない範囲で、22年度におけるモレアスの研究成果を積極的に発表してゆくことも検討中である。
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Causes of Carryover |
1万5千円ほどの差ではあるが、研究用に購入したものの一部を個人的利用に回してその分を自己負担に切り替えたため。
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