2023 Fiscal Year Research-status Report
移民作家のフランス象徴主義――マラルメからジャン・モレアスへ――
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22K00468
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
立花 史 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (20749551)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | マラルメ / モレアス / ブールジェ / タルド / ビュイソン / 読書 / 古代ローマ / 墓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の一環として、2023年度は、前年度に引き続き、若者に読書の対象である象徴主義を退廃の一形態として批判する言説が、その一方でブーランジスム以降の排外主義と結びついた、1890年前後には、象徴主義を、とりわけゲルマン系の外国人の集まりであるがゆえに反フランス的であるとして非難する言説を追いかけている。 その際、そうした保守的さらには反動的な言説が、奇妙なことに、モーラスをブレーンとして、むしろ南欧系のフランス人たちを結束させる形で「ロマーヌ」という概念に訴えてゆく過程をたどると同時に、これによって、モレアスが当初に抱いていた、17世紀の古典主義の規範からはずれた中世からルネサンスまでのフランスの文学的なリソースを、象徴主義の延長線上で再評価しようとする新学派の構想が、このモレアスの影響で、どのようにゆがめられ、簒奪されていったかを再調査している。 ここまでの研究の道筋は、Robert Jouannyの古典的研究にくわえ、Olivier Bivortのモレアス研究に負うところが大きいが、それを元にして、本研究では、世紀末の有名作家のインタビューとして以外あまり参照されないジュール・ユレのインタビュー集のなかから、排外主義のくすぶる暗部を再確認し、世紀末の政治的分断を浮き彫りにしつつ、それがどのような形で古代ローマに結び付けられているかを分析している。その際、Patrick McGuinnessの創意に富んだ著書も参照している。McGuinnessのアイディアを堅実な研究に落とし込むために、本研究では、ロマーヌ派のローマの表象に、退廃読書批判と有害な男性性がどう結びついているかを併せて見てゆくことで、McGuinnessの着想を、さらに細かく19世紀末のフランス社会の諸相に紐づける作業をおこなっている。その成果の一部を、福島祥行教授の主催する研究会で年度末に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
別の科研費研究の一環でシカゴ大学で発表した研究成果を査読論文として提出したところ、査読者からたいへんていねいな質問や指摘を受けたため、それに答える形で研究をしながらのやりとりをおこなったところ、年度後半は、その作業に多くの時間を取られたので、進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
成果としてまとめるという点では、やや遅れているが、昨年度から、すでに、モレアスの詩の分析はかなり進めているので、2024年度以降は、その成果を積極的に形にしてゆくことで、遅れはかぎりなく軽減できると考えている。また、「「現代の起点」としてのフランス象徴主義の総合的研究」の研究代表者である森本淳生氏から、世紀末の作家を相当程度網羅した『読む辞典』におけるジャン・モレアスの項目の執筆を依頼されており、2024年度は、それを視野に、日本での情報発信に向けて成果を形にする予定でもある。
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Causes of Carryover |
モレアスの故国であるギリシアのアテネに行って資料を調査したり、生地を訪ねたりする予定だったが、旅費や宿泊費の高踏にくわえ、フランスとギリシアの両方に滞在するスケジュールを組むのが日程的に困難だったので、先送りとなったが、代わりに、作品分析や年度末の研究発表の準備に注力したことで、資料収集の経費がかかったため。
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Research Products
(1 results)