2022 Fiscal Year Research-status Report
Dupatyの旅行記の文体論的分析:前ロマン主義の旅行記における詩性の解明
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22K00471
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
野澤 督 大東文化大学, 外国語学部, 講師 (50773438)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 旅行記 / フランス文学 / 前ロマン主義 / 現実描写 / 文体論 / 18世紀文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、デュパティの『イタリアに関する書簡』を分析することで、フランスの前ロマン主義時代の旅行記記述における詩性を明らかにすることを目指している。 2022年度はデュパティの『イタリアに関する書簡』(1785)の現実描写のなかで用いられている語りの構造、アナロジーや比喩等の修辞技法等の表現手法の文体論的分析を行い、その特徴を体系づけることを試みる準備として、デュパティの著作の文献調査を行なった。デュパティが描いたイタリア旅行の行程を整理し、とくにローマの町の風景がどのように描写されているかを確認し、そこで使われている表現手法を整理し、考察を行った。それらの成果を口頭発表として公開した。また前ロマン主義時代に位置付けられる作家シャトーブリアンの現実描写の記述について、彼の時代から現代までの文学者がいかにそれを評価してきたのかをまとめ、シャトーブリアンの現実描写の表現手法に与えられた評価に関する論考を論文として発表した。これにより、旅行記における主観性とその表現手法の特徴を整理すること、前ロマン主義時代の旅行記作品にみられる表現手法上の差異や類似点について比較することの準備が整ったと考えている。 最後に、前ロマン主義関係の文献調査と収集を行った。また現地でも資料を収集することができた。ただし、現地調査については、計画立案時に予定していた時期に調査を行うことができなかった。実施できていない調査や研究者との面談については、2023年度に実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査については、デュパティの作品の調査および前ロマン主義に位置づけられる作家の文献調査とも概ね予定通りに進んでいる。また文献収集についても順調に進行している。 ただし、研究計画時に予定していた一回目の海外での実地調査については、計画していた時期の直前に別の出張が入ったため、現地で行う調査活動に時間的制限が生じてしまった。そのため、現地調査と研究者との意見交換については計画どおりに実施できていないものが残っている。この点については次年度に実施する二回目の調査に加えて実施したり、オンラインによるミーティングの機会を設けたりすることによって、随時実施していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
文献調査は概ね順調に進んでいることから、デュパティの一次文献の調査・分析をより精緻に行う段階に入っていく。具体的には、ローマとナポリの描写で用いられている表現手法に焦点を当てて、シャトーブリアンをはじめとする同時代の作家が描いたイタリア描写との比較を開始する。また、当初の研究計画どおり、18世紀の旅行記作家、とりわけベルナルダン・ド・サン=ピエールやヴォルネイの現実描写の表現手法の調査、整理に入る。またデュパティに関する未収集の先行研究文献を入手し、先行研究調査を引き続き行う予定である。2023年度末には一年目に実施できていない現地調査を行う予定である。 また、この領域の国内外の専門家と意見交換を行うとともに、最終年度である2024年度に開催する会合のテーマや登壇者を検討し、会合の企画を立案し、その運営体制を構築する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた研究活動はおおむね予定通り行えているが、イタリアでの現地調査が実施できていない。計画立案時には一年目に海外渡航費を申請していたが、所属機関で引率業務を担当することとなり、渡航を予定していた4週間前に渡仏することになった。そのため、研究計画作成時に計上していた渡航費の支出負担が抑えられたことが次年度使用額が生じた要因である。実際、全体の研究計画では二度の渡欧の予定が含まれていたが、一回目の渡航については交付金から支払わない事態となった。 次年度使用額の使用計画としては、一年目に実施を計画していた現地の研究者との交流と現地調査の遂行のための費用に充てることとする。二年目にあたる2023年度にも渡欧が予定されていたため、そこに追加してこれらの活動を現地で滞りなく実行できるように2023年度の渡航計画を再検討している。
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Research Products
(2 results)