2023 Fiscal Year Research-status Report
スペイン、イタリア、フランスにおける初期イエズス会の学校演劇に関する比較研究
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22K00476
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
千川 哲生 立命館大学, 文学部, 准教授 (50587251)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イエズス会 / 学校演劇 / 対話 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は16世紀から17世紀イエズス会のヨーロッパ(フランス、ポルトガル、スペイン、イタリア)の各学校において上演された演劇、対話に関する研究を行った。各国の学校で上演された劇や対話の台本に着目し、ローマ、マドリードの国立図書館および大学図書館に所蔵されている写本を調査、比較し、上演記録と照らし合わせることで、上演の実態、共通するテーマ、写本の流通と変容について解明を試みた。スペイン、そしてポルトガル(コインブラ)の学校で上演された対話がローマ学院でどのように受容されるに至ったかを研究した。以上を通して、イエズス会の学校教育が16世紀後半にヨーロッパ各地で普及していく過程において、全体として様式が統一され共通の特徴を有する一方で、個々の地域や学校に応じた多様性を保持していたことを明らかにした。また、17世紀前半に活躍したフランスのイエズス会士ニコラ・コーサンが、ラ・フレーシュ学院で執筆、上演した戯曲を題材とし、エンブレム芸術と演劇の関係に関する論文を発表した。コーサンの悲劇作品における比喩的なイメージの源泉が、彼自身が手掛けたエンブレム・ブックからの借用であること、それが悲劇作品の比喩的な解釈とどのようにつながっているのかを論じた。それにより、学校教育においてエンブレムと演劇が教育課程において関連づけられ、特定のイメージから複数の解釈を導き出す練習として用いられていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの感染収束に伴い、現地調査が可能になったので、マドリードやローマの資料館に収蔵されている資料を現地で閲覧、調査している。また、可能な場合は複写を申請して調査を続けている。したがって大きな遅れはないが、収集した資料の分類・読解に予想したよりも時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した資料のデータベース化を引き続き進めていく。写本の研究の進展に応じて、リスボンやマドリードの資料館での現地調査を実施する。
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Causes of Carryover |
年度内に二度実施することを予定していた海外での資料調査を一度取りやめたため、予算に残高が生じた。そのため、次年度以降に今年度予算を繰り越してすべて消化する予定である。
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