2023 Fiscal Year Research-status Report
文学から気候変動を読む―現代日本文学と英語圏の気候小説を中心に
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22K00488
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
芳賀 浩一 城西国際大学, 国際人文学部, 教授 (70647635)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | エコクリティシズム / 環境批評 / 現代日本文学 / 比較文学 / 文学理論 / 気候変動 / 人新世 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、気候変動をテーマとする日本の文学作品の特質を英語圏の作品との比較分析を通して明らかにすることである。2022年度はコロナ禍の影響により学会参加や資料収集において予定の大幅な変更を余儀なくされた。しかし本年度は徐々にではあるが元の状態に戻っている。6月には計画通りに韓国・慶北大学で開催されたAAS-in-Asia学会に対面で参加し、筆者は“Ambivalent, Postcolonial Green in Nashiki Kaho’s Pistachio.”と題して研究発表を行った。発表では日本の気候変動小説として梨木香歩の『ピスタチオ』(2010年)を取り上げ、日本における研究の現状を紹介すると同時に、「人新世文学」の枠組みとグローバルな気候変動のナラティブを背景に本作の解釈を試みることで、西洋近代とアニミズム的文化に引き裂かれたアンビバレントな情動を日本の気候変動小説の特質のひとつとして抽出した。本発表内容は2024年度中に出版される予定である。 また、年度後半には、映画に先んじて小説版が出版された『天気の子』を人新世の言説との交叉から分析した「人新世の境界における新海誠『天気の子』―ポストコロニアル・エコクリティシズムの視座」を研究ノートとして出版した。人新世の言説が、日本のポピュラー・カルチャーにも浸透しつつある状況を確認出来たことが収穫であった。 本年度分の英文および日本語資料の収集については、ほぼ予定通りに進んでおり、今後はその内容の整理と2022年度分の遅れを取り戻すことが課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度の進捗はほぼ計画通りであったものの、2022年度におけるコロナ禍の遅れを取り戻すまでには至らなかった。英文資料については流通や事務処理に要する時間が長くなっており、入手と整理が遅れ気味になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も計画通りに日本語文献および英語文献資料を収集し整理と分析を進めていく。前半は現在進行中の日本文学の分析が主になるが、後半は英語圏の気候変動小説の整理と分析にも力を注ぎたい。複数回の学会発表と2編以上の論文出版を目指して本研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じている主な理由は、コロナ禍以来、物流と事務処理に要する時間が長くなっている影響で海外文献の入手が遅れ気味になったいること、さらに各種学会がオンラインを併用するケースが増え、旅費の使用が予想を下回っていること等である。 今後は、対面による学会参加を増やし、予定に沿った予算消化に努めたい。
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Research Products
(2 results)