2022 Fiscal Year Research-status Report
現代ドイツにおける「ナチ語彙」の変容と使用動機―言語学と政治学の協働による研究
Project/Area Number |
22K00514
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高田 博行 学習院大学, 文学部, 教授 (80127331)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板橋 拓己 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (80507153)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ナチズム / 語彙分析 / 政治的言説 / 右翼ポピュリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の出発点として、今日「ナチ語彙」として使用されている語を抽出する必要がある。抽出の判別基準とするのは、Schmitz-Berning (2000) のVokabular des Nationalsozialismus(『ナチズムの語彙辞典』、Berlin & New York) に採録された523語である。AfD党(「ドイツのための選択肢」)の政治家たちの演説と公式 Facebook(本人の投稿および閲覧者のコメント)、反難民デモ活動組織 PEGIDA の公式 Facebook(投稿とコメント)を 2014年以降についてコーパス化し、上の523語の使用の有無の確認に取り掛かった。これに加えて、この523語には含まれないがメディア等で「ナチ語彙」とされる語も考察対象とする必要があることを認識した。 AfD 党政治家と反難民デモ活動家の言語使用に関連して、ナチ語彙の「復活」に注意喚起されることが多い。このナチ語彙の復活という捉え方には、個々の語の意味が当時も今も変わらないという前提がある。しかし、終戦後70余年を経て政治的状況が大きく変化したことを考えると、語の意味に変容が生じている可能性がある。例えばナチ時代には「(新領地の)ドイツ化」を意味した Umvolkung「民族転換」という語が今日では「非ドイツ化(難民流入によるドイツ性喪失)」の意味で使用されていることが、調査の中で明らかになった。Lebensraum「生存圏」については、ナチ時代も現代(AfD党幹部Bjoern Hoecke)もポシティブな意味で用いられているが、Hoeckeでは生存圏の拡大ではなく生存圏の(移民からの)防衛が言い表されているという点で意味の変容が確認できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
AfD党の政治家たちの演説と公式 Facebook(本人の投稿および閲覧者のコメント)、反難民デモ活動組織 PEGIDA の公式 Facebook(投稿とコメント)をコーパス化するのに予想以上の時間を要してしまったため、全体としての進行が遅れ気味になってしまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後もいくつかのデータについてコーパス化を予定しているが、研究全体の進行状況を十分に把握して、場合によってはコーパス化するデータ数を減らすことも検討する。 ナチ時代と2014年以降のナチ語彙を比較しようとする場合、その間の1945年から2013年までに当該の語が断片的であっても使用されたかどうか確認しておく必要がある。そこで、本研究2年目となる2023年度には、ドイツの主要な新聞・雑誌の1945~2013年のバックナンバー記事やインターネット掲載記事を検索して、当該の語の使用履歴も確かめておく。
|
Causes of Carryover |
当初予定してたドイツ出張を取りやめたため、当該年度予算に残額が生じた。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] ノモスとしての言語2022
Author(s)
大宮勘一郎・田中愼編(高田博行他9名共著)
Total Pages
344
Publisher
ひつじ書房
ISBN
978-4-8234-1106-9
-
-