2022 Fiscal Year Research-status Report
大規模コーパスに基づく明治・大正時代における字音接辞の実態解明
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22K00520
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小椋 秀樹 立命館大学, 文学部, 教授 (00321547)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 漢語 / 近代語 / 語彙 / コーパス |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)「近代字音接頭辞用例データベース」の構築作業:本研究で使用する基礎データを構築するため、「近代字音接頭辞用例データベース」の構築作業を進めた。2022年度は、字音接頭辞のデータを整備することを目的として掲げ、『日本語歴史コーパス 明治・大正編I雑誌』に収録されている『太陽』から字音接頭辞を抽出し、作業補助者を雇用した上で、誤解析の除去作業を行った。また、その作業と並行して、本研究で調査対象とする字音接頭辞の確定も行った。具体的には、敬語接頭辞「御」や数詞との結合が中心である「各」「計」といった接頭辞を対象から除外することを決めた。これは、漢語を主たる対象とするという本研究の目的と3か年で研究を完結させることを考慮したものである。データベースには、現時点で、結合対象、結合対象の品詞の情報を付与している。 (2) 予備的分析の実施:データベース構築後に分析を行うが、その際の観点について検討を行った。具体的には、字音接頭辞「非-」を対象として、明治期から平成期までの変遷について検討した。この分析を通して、「非-」の造語力について検討する際、「非-」の結合対象の異なり語数の変化を見ることに加えて、「非-」と結合対象とが結合した語(結合形)の度数、用例の見られる年数という観点が有効であることを明らかにすることができた。この分析結果は、小椋秀樹(2023)「明治期から平成期における接頭辞「非-」の変遷」(『国語語彙史の研究』42、左97-左116)として発表した。また、更に同様の観点で、「非-」とともに否定の意味を表す字音接頭辞としてまとめて扱われることの多い「不-」「未-」「無-」についても調査を行い、中間報告を行った。この結果については、2023年度に論文として公表する予定である。また、今後、他の字音接頭辞についても同様の観点で調査を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『日本語歴史コーパス 明治・大正編I雑誌』の非コア(人で修正を行っていないデータ)を検索対象に含めていること、そもそも誤解析の生じやすい1字の漢語を調査対象としていることから、誤解析が予想を上回った。そのため、誤解析の除去に予定より多くの時間を割くこととなった。このことによって、想定よりも進捗がやや遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり研究を遂行し、成果を出すため、2022年度以降、次のような方策を取る。 (1) 調査資料の縮小:『太陽』(1895・1901・1909・1917・1925年)は、各年とも延べ語数が約180万語~約200万語である。一方、『日本語歴史コーパス 明治・大正編I雑誌』に収録されたその他の雑誌を見ると、延べ語数がかなり小さい。『明六雑誌』(1874・1875年)は約18万語、『東洋学芸雑誌』(1881・1882年)は約20万語、『女学雑誌』(1894・1895年)は約58万語、『女学世界』(1909年)は約52万語、『婦人倶楽部』(1925年)は約53万語である。『国民之友』(1887・1888年)はかろうじて約100万語を確保できる。小規模な雑誌からは、十分なデータが得られない可能性があり、女性向け雑誌は位相の違いという問題もある。そこで、調査対象を『国民之友』(1887・1888年)と『太陽』(1895・1901・1909・1917・1925年)とする。 (2) 調査対象の縮小:本研究では、漢語の造語力の一端を明らかにしようということから、字音接辞に着目している。このことから、研究当初から敬語の接頭辞「御」を既に除外している。さらに昨年度の研究計画実施過程で、数詞との結合が多い「各」「計」を除外している。2023年度の計画では、漢語の造語力という観点から、調査対象から除外する接辞を更に増やすことを検討する。これについては、実データを見ながら、検討することとする。
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Causes of Carryover |
【次年度使用額が生じた理由】 作業補助者(学部生)を1名雇用した。当初は、この1名で作業を十分に進めることができると想定していたが、調査対象資料が文語資料であること、誤解析が予想以上に多かったことから、作業者にデータを提供する前に研究代表者が作業をしやすい形にデータを整える必要が生じたため、当初の予定どおり作業が進まなかった。 【使用計画】 作業補助者を2名に増員するとともに、うち1名(可能であれば、2名とも)を大学院生とする。
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