2022 Fiscal Year Research-status Report
A Comprehensive Study of the Lexicon and Grammar in the New Testament of Medhurst's Chinese Nanking Mandarin Version
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22K00551
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
永井 崇弘 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 教授 (80313724)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 漢訳聖書 / グリフィス訳 / 南方官話訳 / 版本比較 / 訳文比較 / 南京官話 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度ではメドハースト・ストロナックによる南京官話訳《新約全書》のさらなる版本の収集を行う一方、グリフィスによる南方官話訳との比較においてメドハースト・ストロナックによる南京官話訳の特徴を見出すために、グリフィスの南方官話訳《新約全書》の漢訳文の全文を電子テキスト化した。また、論文「グリフィスによる官話訳《新約全書》の版本間における異同箇所について」(福井大学教育・人文社会系部門紀要第7号2022年,1-14頁)を執筆し、公表した。漢訳聖書を中国語資料として取り扱う際に留意する必要があるのは、その系譜と版本間の異同である。この論文により、グリフィスによる初版系の1892年版(引照なし)と最終訳系の1906年版(引照付)の官話訳新約聖書における異同箇所を確定することができた。この1892年版と1906年版の異同箇所について、(1)グリフィスによる漢訳新約聖書の節区分には他の漢訳聖書に比して節の合併箇所が多く見られ、節の合併については、1889年までは安定が見られないが、1890年以降はどの訳本でも一致が見られ安定していること、(2)1892年版の官話訳の漢訳文は、1889年版の官話訳と1892年版と出版年が近い1889年版と1890年版の浅文理の影響を受けているということ、(3)節の合併箇所と訳文の異同箇所の考察から、1892年版と1906年版の官話訳は1種類の版本のみに依拠して完成したものでなく、複数の異なる文体による訳本を参照した複雑なものであるという3点が明らかになった。この研究成果により、グリフィスによる南方官話訳《新約全書》を中国語資料として用いる際の注意点が明確となり、今後のグリフィスによる南方官話訳の官話の特徴の解明はもとより、南京官話と北京官話の境界線やメドハースト・ストロナックの南京官話訳の特徴の解明に資するものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度では、グリフィスによる南方官話訳《新約全書》の訳文の電子テキスト化は当初の2023年度入力完了予定から前倒ししてすべて完了することができた。また、グリフィスによる南畝官話訳の複数の版本における漢訳文の比較を行い、その版本間の異同箇所を特定することができた。この研究成果は、永井崇弘2023.1.グリフィスによる官話訳《新約全書》の版本間における異同箇所について,単著,福井大学教育・人文社会系部門紀要第7号2022年,1-14頁によって論文として公表することができた。また2022年度では、英国において文献調査を行い、1857年版、1869年版のメドハースト・ストロナックによる南京官話訳《新約全書》に加えて,これまで知られていなかった1860年版のメドハースト・ストロナックによる南京官話訳《新約全書》を発見し、その漢訳文を写真撮影することができた。また,メドハーストによるローマ書の注解書《羅馬書註解》(1857年墨海書館:上海)をはじめとする本研究課題に関連する文献を発見し、本文の写真撮影を行うこともできた。以上の研究上の成果から、現在までの本研究課題にかかる研究は、おおむね順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の影響により2022年度に実施予定であったオーストラリアでのメドハースト・ストロナックによる南京官話訳《新約全書》(豪州本)をはじめとする漢訳聖書および関連する文献の調査を2023年度に行う予定である。2022年では1年前倒ししてグリフィスによる南方官話訳《新約全書》の漢訳テキストをすべて電子テキスト化することができた。これまで新約部分の漢訳文の電子テキスト化を完成させているメドハースト・ストロナックによる南京官話訳と北京委員会による北京官話訳と併せて、それぞれの漢訳文を比較しながら、メドハースト・ストロナックによる南京官話訳における南京官話の特徴を構成する要素を一つ一つ明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、オーストラリアにおける文献調査が実施できなかったことが主要な要因である。今年度2023年度には未実施のオーストラリアにおける漢訳聖書の文献調査を行う。
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Research Products
(1 results)