2022 Fiscal Year Research-status Report
初期語彙発達の個人差を生み出す神経基盤の解明:意味記憶形成過程からの検討
Project/Area Number |
22K00560
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
秦 政寛 慶應義塾大学, グローバルリサーチインスティテュート(三田), 特任助教 (50706439)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 乳幼児 / 語彙 / 意味 / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に表出言語の発達に遅れを伴う子ども(Late Talker: レイト・トーカー)の初期の言語獲得の特性を、脳波を指標とした単語の意味処理の側面から明らかにすることを目的としている。レイト・トーカーは、一般的に聴覚、認知、社会性などの発達には問題がないとされる中で、表出言語の遅れが2歳前後に表面化することから、その前言語期からの発達過程を捉えた研究は少ない。 研究初年度となる本年度は、実験環境整備ならびにデータ収集の開始を予定していた。しかし、コロナ禍による予備実験開始の遅れ等により、実質的なデータ収集を開始することができなかった。本研究は縦断研究であることから、一日も早いデータ収集の開始ができるよう継続して準備を進める。 一方で、近赤外分光法(NIRS)による乳児の脳機能データを用いて、レイト・トーカーに該当する乳児の前言語期における言語音声処理(音韻弁別と抑揚弁別)の解析に着手した。本研究では単語レベルの意味処理をターゲットとしているが、音の連鎖から抑揚や音韻の変化に気づき、単語を形成する音のまとまりを抽出することは、初期の言語獲得における重要な能力とされる。また単語の表出(正しい構音の生成)には、正しい音韻表象の形成が必要であると考えられる。このことから、レイト・トーカーの発達初期の音韻意識に関わる神経基盤を明らかにすることは、その後の意味情報処理を検討する本研究においても非常に重要な知見となりえるものである。現在も解析中であるため、具体的な結果の報告には至っていないが、今後の脳波計測によるデータ収集と平行するかたちで、本解析を継続していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、その他の活動へのエフォートの増加ならびにコロナ禍の影響により、データ収集を開始することができなかった。しかし、本研究を進める上での重要な知見となりえる音声言語処理に関わるNIRSを用いた脳機能計測データの解析作業に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は縦断研究であるため、一日も早い実験環境整備の完了ならびにデータ収集の開始ができるよう必要作業を遂行する。加えて、現在行っている音声言語処理の脳機能データの解析を継続する。
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Causes of Carryover |
本年度は、データ収集の実施ができなかったことから、謝金として使用を予定していた経費の未使用ならびに消耗品としての脳波電極の未購入が主な理由としてあげられる。次年度は、主にデータ収集における謝金ならびに学会参加への必要経費等の支出を予定している。また、必要に応じて、脳波電極の購入等にも使用する。
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