2023 Fiscal Year Research-status Report
八丈語の記述文法書作成と言語継承への応用に関する研究
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22K00592
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
三樹 陽介 駒澤大学, 文学部, 准教授 (40614889)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 八丈語 / 記述文法 / 継承教育 / 消滅危機言語 / ドキュメンテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度から継続して記述の枠組の検討や調査項目の開発など、先行研究を元にした情報集積と整理を行なっている。また、収集済みデータや先行研究の用例整理を進めているが、方言概説書や文法書の作成というところには至っていない。その理由は、2022年度に続き、2023年度も臨地調査が十分に行えなかったという点に尽きる。ただし、2022年度が新型感染症蔓延と調査自粛等が理由で臨地調査が行えなかったのに対し、2023年度は学内外の業務が重なり大幅に業務負担が増えたことや、本研究以外の調査研究(共同研究も含む)が活発化したことにより、臨地調査実施に当たっての時間的・体力的余裕がなかったことによる。調査再開に向けた準備はできており、話者とも連絡を取り合っている。2024年度は業務負担状況は若干改善される見込みであり、また2025年度には集中的調査研究を行なうために時間的余裕を作る準備をしている。研究実施環境は今後徐々に改善されていくものと考えている。
2023年度は文化庁主催の消滅危機言語・方言サミット(於、沖縄県与那国島与那国町)や、八丈町主催の第2回八丈方言大会(於、東京都八丈島八丈町)等、国や自治体が主催する方言継承活動に関する催し物には積極的に参加・取材し、2024年度の消滅危機言語・方言サミットに向けた準備を行なった。また、学会等にはこれまでと同様に参加しているが、本研究課題に関する学会発表や論文発表が行えなかったことは反省すべき点と考えている。一方で他の研究課題(共同研究も含む)が活発化していることに伴い、そこから本研究に応用できる課題も多くみつかっている。こうしたことを足掛かりとし、本研究実施に反映させていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績概要に書いたように、臨地調査実施が不充分であったため、方言概説書・文法書作成が遅れている。既存のデータを整理することで全体のイメージや部分的な執筆は進めているが、対応しなければならない課題も多く、同時に今後の調査の下準備を進めている。記述の枠組の検討や調査項目の開発など、先行研究を元にした情報集積と整理、収集済みデータや先行研究の用例整理等は積極的に進めているが、データの不足から、これらを基にした研究発表や論文発表には至らなかった。いずれも学内外の業務負担の増大からくるもので、調査日程が確保できない、調査研究に充てる時間的・体力的余裕がない、といった問題が大きい。ただし、こうした問題は2023年度において起こってしまった個別的な問題であり、この年度に限った一時的な業務も含まれており、2024年度には部分的に解消される。また、2025年年度は研究に従事する時間的・労務的余裕が確保できるよう、学内で調整・手続きを進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
調査を再開し、これまで準備してきた調査計画に基づいて、できるだけ多くのデータを収集することが最優先事項である。現在までの進捗状況でも述べたように、一番大きな障害は業務負担の増大であり、ある一面ではやむを得ないことであるが、幸い2024年度は多少業務負担が軽減されており、調査再開の目途は付いている。また、2025年度は研究に集中できる環境が得られるよう、学内外での調整をしている。これまで実施できなかった分の調査項目の処理(特に2023年度分)だけでも相当量の調査が必要になってくる上、今後の調査の整理・分析過程で新たな問題点が現れてくることも予測できるが、まずは問題の先送りにならないよう、年度内での調査完了を目指しつつも、場合によっては重点を置く部分を絞り込み、年度内の問題解決、学会・論文発表につなげていきたいと考えている。一方で年度内に調査完了できなかった問題については、2024・25年度を連続して捉え、2025年度以降に繰り越すことも想定して柔軟に対応したいと考えている。 なお、2024年度は消滅危機言語・方言サミットが開催される予定であり、それに合わせて学習書や簡易方言概説書の作成を進め、社会への研究成果還元に努めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2023年度に計画していた臨地調査の本格的な再開ができず、旅費として計上していた金額に残額が生じた。また、2023年度は学内外の他の研究費が多く得られたため、そうしたものを活用して調査・研究出張費に充てたため、結果として本研究費での支出額が少なくなった。ただ、2024年度以降(特に2025年度)は調査再開に合わせ調査出張費が大幅に増える見込みであるため、これまで繰り越してきた残額を集中的に使用することになると予測している。これは当初の研究計画とは異なるものだが、業務負担の増大という不可避の現実的な問題を回避するための施策に合わせたものであり、合理的判断と考えている。
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