2022 Fiscal Year Research-status Report
Postwar Japanese Society and "Dialect"
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22K00593
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
田中 ゆかり 日本大学, 文理学部, 教授 (40305503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金水 敏 放送大学, 大阪学習センター, 特任教授 (70153260)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ヴァーチャル方言 / 方言コンテンツ / 全国方言意識調査 / 戦後日本語社会 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、戦後日本語社会における「方言」意識の変遷を量的データと事例研究を同時に遂行することにより、多角的・立体的に捉えなおすことを目的とする。初年度は、(1)大衆的コンテンツ調査、(2)手元にある全国規模の大規模言語意識調査データの解析と新規調査準備、(3)国際シンポジウムをはじめとした成果公開のための学術イベント準備等を中心に進めた。 (1)については、高度経済成長期である1960年代の新聞連載小説である松本清張『砂の器』(1960年~1961年、読売新聞夕刊連載)、川端康成『古都』(1961年~1962年、朝日新聞朝刊連載)関連の各種テキスト・資料の収集と整理を進めた。また、占領軍による封建主義的な内容についての検閲が存在した戦後占領期の雑誌連載小説『夢介千両みやげ』(山手樹一郎、『読み物と講談』1948年~1949年連載)と、それを原作とする宝塚歌劇団上演作品に登場する主人公格に付与される脚本における〈田舎ことば〉関連の資料収集と調査を行った。コンテンツ調査の一部について、研究分担者・同協力者から随時教示を受けた。(2)については、手元にある2015年全国方言意識Web調査の分析を研究協力者と進め、査読付き学会誌に投稿、採択された。2023年度の掲載が決定している。ここから得た課題を踏まえ、次年度以降に予定している大規模な言語意識調査の設計を予定している。(3)については、対面での国際学術イベントが現実味を帯びてきたことにより、2023年度4月末に米国で、同年6月末に国内で開催予定の国際学術イベントの準備を研究分担者・同協力者を含む各国の関係者らと進めた。 この他、ヴァーチャル方言に関連した一般向けのインタビュー記事・エッセイ等を公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「5.研究実績の概要」に示した通り、おおむね当初の研究計画通りに進展しているため。 本研究課題初年度は、国内外の学術イベントを対面開催するには、国・地域による移動困難度に大きな差がある状況にあった。そのため、対面開催のための準備期間と位置づけ、ビデオ会議システムによる研究会・打ち合わせ会等を開催した。代わりに移動を伴わない方言コンテンツの収集と調査や、手元のある言語意識調査データの解析と論文執筆と投稿、大規模調査企画・検討を先行させるなど柔軟に対応したことにより、おおむね当初の計画通りに進展したと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、当初の研究計画を基本とする進展を目指す。具体的には、言語意識調査データと大衆的コンテンツを対象としたヴァーチャル方言研究を並行して企画・実施する。研究分担者の金水敏氏(放送大学)は、役割語研究の視点から「方言」コンテンツの探索と分析の一部を共に行う。大規模な言語意識調査の設計・実施ならびに分析に際しては、研究協力者の前田忠彦氏(統計数理研究所)、相澤正夫氏(国立国語研究所)・林直樹氏(日本大学経済学部)、国際学術イベントの開催に際しては、マイケル・エメリック氏(UCLA)等からその知見と協力を得る。 各年度の研究計画は、以下の通り。 【2023年度】全国方言意識調査の実施と分析、商業演劇等大衆向けコンテンツ収集と調査・分析、国内外における国際的学術イベントの開催(4月末、6月末)・国内外学会発表・論文等による研究成果の公開 【2024年度】全国方言意識調査の分析、テレビCM等コンテンツ調査と分析、学術イベント・国内外学会発表・論文等研究成果の公開 【2025年度】補充調査と総合的な分析、国際シンポジウム・国内外学会発表・論文等研究成果の公開
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Causes of Carryover |
初年度に遂行可能な研究を行った結果、年度末に824円の未使用が生じた。未使用金については、本研究課題は継続課題であるため、次年度以降に使用とすることにした。 初年度は、高性能PCを購入した。高性能PCを用いて、各地の研究分担者・同協力者らとのオンライン研究会・打ち合わせ会を行うことができた。一方、初年度は、いまだ移動制限があったため、調査・成果公開を目的とした旅費使用がなかった。このため、若干の未使用金が生じた。未使用金については、次年度以降に実施する大規模言語意識調査の調査委託費等に使用を予定している。
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