2024 Fiscal Year Annual Research Report
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22K00596
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| Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
朴 真完 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (90441203)
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| Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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| Keywords | 朝鮮口聞書 / 仮名転写表記 / 朝鮮語通詞 / 対馬 / 漂流民 / 諺文反切表 / 外伊 / 文字教育 |
| Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず新しい資料の発掘や内容分析に努めた。『朝鮮口聞書』は18世紀後半、対馬の朝鮮語通詞によって筆写された漂流民関連記録である。本書に記載された仮名転写表記は18世紀後半の朝鮮語音声を直接的に反映する資料である。本文の語彙と会話文をハングルに復元した結果、「・」(アレア)の非音韻化はもちろん、鼻音化と口蓋音化、「・」(アレア)の短母音化が18世紀後半に広範囲に広がっているという事実が確認できた。また、本書は漂流民の取り調べと送還時に使われた会話文と共に、基本語彙および朝鮮文化と関連した情報を提供するので、語彙史資料としても有用に活用できる。 一方、音韻史と関連して、「諺文反切表」は「初聲終聲通用八字」に「外伊」を追加し、それを終声として扱うという点で特徴的である。「外伊」は、下向二重母音(falling diphthongs)の習得のために導入され、19世紀から20世紀初めまでに「諺文反切表」とともに流行したが、20世紀中盤から文字教育が単語・文章中心になってから、次第にその姿を消す。「外伊」が消滅した直接的な原因は、下向二重母音の短母音化である。つまり、「外伊」が分析不可能となったため、「外伊」を終声(パッチム)に分類する必要がなくなったのである。その結果、伝統的な文字学習に有用な概念であった「外伊」が、現在の文字教育では扱われなくなる。 このように「明治期朝鮮資料」を一層発展させるためには、新しい資料の発掘が重要でである。以上の資料は近代日本語の様々な言語的特徴と、黎明期であるがゆえに短期間で生じた言語変化の諸相を実証的に示している。また口頭語本来の対面的な場面での会話を重点的に収録しているため、近代日本語における口語体の特徴やその成立過程を、国内資料の研究にはない新たな視点から明らかにすることができる。
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