2023 Fiscal Year Research-status Report
英語の現在時制諸現象の包括的説明に関わる「状態性」を巡る通時的・共時的研究
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22K00623
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 万里子 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (20189773)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Be+V-ing構文 / 近現代の進行形 / 動詞のアスペクト / 単純現在形 / 状態性 / 18世紀書簡集 |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀は、残存文献上近代顕著に発達した英語のBe+V-ing構文の転換期として重要な鍵を握る。しかし、当時の活版印刷はデジタル化し難い上、この構文の意味機能や歴史的語用論的性質により、話し言葉を反映するテクストに多く現れるため、書き言葉に過ぎない残存文献からのデータは極めて乏しい。そこで本研究では、ECCOから、資料を実在の人物の肉声を最も反映すると思しき書簡集に絞り、前年度迄に500冊以上に目を通し収集した18世紀のBe+V-ing構文500余の事例を、文脈に照らし抽出した。 上記予備調査を礎に、まず近現代の単純形とBe+V-ing構文の意味機能分布対照データを、数値化を試みつつ分析した。前半は、always及びその類似義の副詞と共起する、即ちアスペクト範疇で「状態」事象を表す場合に焦点を当て、二形式を比較考察した。後半は、より多角的な観点から二形式の相違や特色を捉えることに重点を置いた。 研究結果を、4月の英語史研究会第32回大会における講演内容の一部とした。そのフィードバックに基づき、7月の国際語用論学会2023で、主に歴史・社会・語用論的側面を発表し、8月の国際認知言語学会では、そこに認知言語学観点を加えて論じ、フロアからの手応えを得た。その後、単純現在形の状態性とBe+V-ingが状態と解釈される場合との共通性と相違について、福岡認知言語学会50周年記念論文集投稿論文に纏めた。 単純形との機能役割分担の歴史を通じ、Be+V-ing構文は、過去形では隣接節が表す時点の事象、現在形では相手と共有する時空での状況に注目し、単純形は事象を相対的により広い視野で捉える。ゲルマン言語に広く見られる動詞派生名詞V-ingとの関係において突き止めた事実が、英国社会の多面的な変化が二つの構文の役割の変化に影響している可能性と整合的であることを示すことができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間不足によりここ数年続いた遅れを多少なりとも取り戻し、最終年度に向けての準備も幾ばくかは進める事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
接続法、いわゆる仮定法現在の場合や、動詞が現在時制の形態素を有する形式、単純現在形、単純過去形、Be+V-ing構文、完了形に一貫した意味機能について、これまでより広範囲かつ具体的な事例を精査しつつ深掘りする。
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Causes of Carryover |
予定している大英国図書館への調査渡航に係る費用の、円安により予想される高騰に少しでも備えるため
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