2022 Fiscal Year Research-status Report
Historical pragmatic study of impoliteness in Early-Modern English period
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22K00626
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
椎名 美智 法政大学, 文学部, 教授 (20153405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝浦 真人 放送大学, 教養学部, 教授 (90248998)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | インポライトネス / ポライトネス / 本音と建前 / 創造性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、これまで日本の語用論研究であまり焦点の当たってこなかったインポライトネスに注目する。研究代表者が2021年に発表した 論考「悪態はなぜ多様性に富むのか?」(『近代英語研究』第37号、近代英語協会)を見直して再検討し、インポライトネス研究をポライトネスの中に含めることができるような枠組みを考えることとした。 ポライトネス効果は期待される慣例・規範を守ることによって生まれ、言語的にも定型性があるが、インポライト現象は期待される慣例・規範を意識的・無意識的に破り、人の期待を裏切ることによって生まれる。そのため、ポライトネスとは違う独自のメカニズムを持つ変則的な言語活動であり、そこに定型性を見出すことは難しいことがわかった。 本研究は、当初、初期近代英語期のインポライトネス現象の特徴を歴史社会語用論的視点から質的・量的に分析することを目的としていたが、日本ではあまりインポライトネス研究が行われていないので、日本語のテキストにおけるインポライトネス研究も行い、比較することによって、より広い視野からインポライトネス現象を捉えることにした。 具体的には、2019 年 6 月に行われた近代英語協会・第 36 回 大会でのシンポジウム『近代・英語・ポライトネス―近代社会で(イン)ポライトに生きること―』(司会・講師 椎名美智、 講師 阿部公彦、 ディス カッサント 滝浦真人)にまで遡り、そこでの議論を基礎に、インポライトネス研究に携わっている研究者を集めて、インポライトネスについて広く考えてみようという試みであった。共同研究者二人が共編者となり、『イン/ポライトネスー絡まる善意と悪意』(ひつじ書房)という論文集を刊行し、研究の成果を発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で学会発表は思うようにできなかったが、その分は論文執筆や論文集の形で研究成果を発表することができた。 本研究では、インポライトな言語現象における話し手の意図と聞き手の解釈の両方に注目し、どのようなメカニズムで特定の発話行為がインポライトネス効果を発揮するのかを、下記の4つの問いに答えながら分析していくことを目標とした。(1)初期近代英語期口語表現におけるインポライトな言語現象にはどんなものがあるか ?(2)その語用論的特徴は何か?(3)インポライトネス現象の本質は何なのか?(4)インポライトネス現象のメカニズムとは何なのか? 以上の4つの問いについては、近代英語の口語表現のコーパスに見られる卑語を親愛語と比較しながら、観察することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、次の6つのステップを踏みながら、研究を進めていくことになっている。(1) 個別テキスト分析(個別テキストの特徴の把握)→(2) 全体の統合(コーパス全体の傾向の把握)→(3) 時代区分内の特徴(時代区分毎の共時的特徴の把握)→(4) 時代区分毎に全体を統合(時代区分を通した通時的特徴の把握)→(5) コーパス調査のまとめ→(6)ポライトネス理論の再考とインポライトネス理論の構築 個別のテキスト分析をしようにも、テキストの個体差が大きいために、これまではコーパス全体の傾向を把握することに力点を置いて、インポライトネス現象の特徴を考察してきた。今後は、全てのテキストを個々に見ていくのではなく、インポライトネス現象が観察されるテキストを取り上げて、質的調査をする必要がある。また、インポライトネス現象の特徴をまとめて、インポライトネス理論のようなもの構築する方向で考察を深めていきたい。またそのインポライトネスについての考察を含めてポライトネス理論を捉え直し、イン/ポライトネス理論のようなものをまとめていく方向で研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために、国内外の学会での研究発表ができず、発表したものはzoom開催だったために出張費として計上していた予算が消化できなかった。コロナ禍も落ち着いてきたので、2023年度は国内外の学会での研究発表を行い、国内外の研究者との交流を行い、フィードバックをもらい、研究の幅を広げていく予定である。
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