2022 Fiscal Year Research-status Report
メタファーと代名詞における固定化とネットワークに関する理論的・実証的研究
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22K00628
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
岩崎 真哉 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90379214)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 固定化 / 慣習化 / ネットワーク / 代名詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の第一の目的は、言語の固定化と概念ネットワークが言語事象を体系的に、また包括的に説明することであるが、まず言語の慣習化(Conventionalization) と定着(Entrenchment)に関わる先行研究をまとめた。具体的には、Schmid, Hans-Jorg (2020) The Dynamics of the Linguistic System: Usage, Conventionalization, and Entrenchment のモデルを分析し、その有用性を分析した。Schmidのモデルでは、慣習化と定着は、後者は特に話者の心の中で知識が継続的に繰り返し組織化されていくことを指すことで区別され、両者は、社会共同体の中で使用される中で強化され、語用論的知識が付加されることが述べられた。 また、第二の目的は、時間メタファーと架空移動(fictive motion)表現との関連性を固定化とネットワーク(Diessel, Holger (2019) The Grammar Network: How Linguistic Structure Is Shaped by Language Use, Cambridge University Press, Cambridge.)の観点から説明することであるが、時間メタファーと架空移動表現の事例を現在、収集している。 第三の目的は、ジェンダーアイデンティティの観点から英語の人称単数名詞の拡張過程を固定化とネットワークの観点から捉えることであるが、これについては、英語のthey/their/themの単数を表す使用法の歴史的発展を調査している。 以上の調査・研究については、「慣習化に関する一考察」という形にまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通り、初年度は、まず時間メタファー、単数を表す用法のthey/their/themに関連する文献のリストを作成し、その網羅的な調査を行い、ある程度まとめることができた。今後、新たな文献が出版されれば、随時入手し、同じように調査していく。また、先行研究の十分な理解・把握に努めた。問題点があれば、その指摘を行った。 次に時間メタファー、単数を表す用法のthey/their/themに関する言語データ)を先行論文、雑誌、新聞などいろいろなジャンルから収集した。今年度は、主にインターネット上で入手不可能な図書・文献を中心に資料を収集したため、次年度は、インターネット上で入手不可能であった資料について、現地の図書館等に直接赴いて調査する。 理論の研究については、特に、Schmid (2020)とDiessel, Holger (2019) The Grammar Network: How Linguistic Structure Is Shaped by Language Use, Cambridge University Press, Cambridge.の研究に注目し、両者の研究分析をまとめた。後者については、他のネットワーク分析との違いも見られるが利点を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き、時間メタファーと架空移動表現の事例を多く収集する。また、単数を表す用法のtheyにおいては、ジェンダーアイデンティティの観点から、より多くの使用状況を調査する。特に、その用法のtheyの使用は、次第に社会的認知が広くなされてきており、その使用範囲が広がり、事例が多く見られてきている。その定着具合を調査し、ネットワーク分析を用い、記述する。また新たなネットワークモデルの提示を目指し、定着した用法と新しい用法を含むような、拡張性の高い動的なモデルを提示できるような研究を行う。 さらに、提示されるモデルにより、新しい用法がいくつかの文脈と相互作用しながら創発されることも説明され、複雑適応システムであるという先行研究のSchmid (2020)の分析との類似性も考察される。表現の定着や慣習化には頻度も関係するため、表現の頻度も調査する。 以上の研究をまとめ、口頭発表か論文で発表できるようにする。
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