2023 Fiscal Year Research-status Report
移動と接触による大学生の言語意識・言語使用の変容に関する実証研究
Project/Area Number |
22K00632
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉野 文 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (10261885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高 民定 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (30400807)
西住 奏子 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (40554176)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 移動 / 留学 / 異文化接触 / 言語使用 / 言語使用意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大学において、留学をはじめとする多様な接触場面の経験が、コミュニケーションをめぐる行動と意識にどのような影響を与えるかを調査し、言語意識や言語使用意識などの変化の有無、変化のあり方を通時的に明らかにすることにある。 令和5年度は、留学を必須とする大学の、学部1年生を対象とするアンケート調査、言語ポートレートの作成、インタビューを主に実施した。アンケートは、大学入学前の移動の経験、使用言語や言語学習の経験、留学に対する意識などを確認するもので、調査協力者50名から回答を得た。また、入学時の言語レパートリーと言語アイデンティティを明らかにするために、そのうちの33名に言語ポートレートを描いてもらい、それをもとに10名の協力者にインタビューを実施した。 調査の結果から、入学時におけるコミュニケーションに対する自己評価として、消極性、自信のなさを挙げる者が少なくない一方、3分の2の学生が、留学によりコミュニケーションに関する態度・意識が変化すると予想していることがわかった。また、日本語、英語以外の言語の学習者はいたが、運用能力に対する自己評価は全体的に低かった。通時的な変容を明らかにすることを目指す研究にとって、入学時の態度・意識を明らかにすることは、その変容を記述するために不可欠なものである。 また、前年度に引き続き、長期留学経験者(学部4年生)2名に対するインタビューも実施し、前年度のデータと併せて分析を行った。その結果、留学により多様な英語と接触することで、それらに対する留意、評価、調整が見られること、英語以外の現地語の学習、使用が多言語使用に対する新たな意識の形成につながること、交友場面でのネットワークにおいて日本語話者の有無がネットワークの選択理由になっていることや日本語使用場面では日本語非母語話者に対する言語調整が見られることなどが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学部1年生に対する調査の開始が1年遅れたため、全体的に遅れが生じている。また、インタビューを補足するための実際の接触場面の参与観察は実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、前年度の調査協力者に対して追跡調査を行い、1年間の異文化接触経験、およびその経験が与える態度・意識の変化を明らかにする。また、留学を経験した学生に対するインタビューにより、留学先の言語環境の相違が言語意識、言語使用意識に与える影響を探る予定である。
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Causes of Carryover |
宿泊を伴う学会発表を行わなかったこと、またインタビューの実施回数が予定より少なく謝礼および文字化経費が抑えられたことが理由である。令和6年度は学会発表を複数回行うこと、調査協力者数を増やすことを予定している。
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Research Products
(2 results)