2022 Fiscal Year Research-status Report
理工系英語コース留学生の研究・就職に必要な日本語能力の分析と日本語教育への応用
Project/Area Number |
22K00637
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
卓 妍秀 大阪大学, スチューデント・ライフサイクルサポートセンター, 教授 (10512569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村岡 貴子 大阪大学, 国際教育交流センター, 教授 (30243744)
福良 直子 大阪大学, 国際教育交流センター, 講師 (90822164)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大学日本語教育 / 理工系留学生 / 大学院の英語プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の初年度では、アンケート調査とインタビューの実施、研究ミーティング9回、文献調査などに取り組んだ。これらの取り組みは、次の課題に焦点を当てている。第一に、理工系大学院の英語プログラムに在籍する留学生が研究室における「コミュニケーションの環境」と「留学生の属性に応じた日本語のレベル・技能」を把握するため、日本語と英語を使用したアンケートを実施した。この調査には70件の回答があり、回答者の日本語のレベルは初級から上級まで幅広いことが明らかになった。第二に、24人のインタビュー対象者に対して、「なぜ英語の大学院プログラムに入学したのか」「研究活動における使用言語について」「卒業後の進路について」という主要なテーマに基づいてインタビューを行った。インタビュー結果からは、インタビュー対象者は英語で行われる授業や所属する研究室のスタッフとのコミュニケーションにはそれほど難しさを感じていないが、研究以外の会話に関しては時折違和感を感じることがあると述べていた。また、英語が通じない場面では、問題を解決するために頻繁に自動翻訳機能を利用していることが分かった。第三に、日本での就職を考える留学生の多くは、自己学習によって日本語を習得し、目的に応じた日本語教育の必要性を強く感じていることだった。 アンケートとインタビュー調査の結果は、関連する学会誌への投稿および発表の準備を進めている。さらに、大学院の英語プログラムを修了し、日本に残り大学や企業で研究活動を続けている2人の元留学生に対して、彼らが長年にわたって行ってきた日本語学習の取り組みについて調査した。彼らの回答を基に、在学中の理工系留学生をどのように日本語教育の面でサポートするかについて考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度には、以下の活動を実施した: 1. 理工系大学院の英語プログラムに在籍している留学生を対象にしたアンケート調査の結果を分析した。 2. インタビューを行った留学生について、英語プログラムへの入学理由、研究室での言語の使い分け、卒業後の進路、および日本語の学習方法について詳しく調査した。 3. 本研究の意義と必要性についてのミーティングを実施し、将来の英語プログラムにおける留学生の日本語教育の方法を検討した。 これらの活動は予定通りに実施された。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度には、以下の活動を予定している。まず、(1)追跡調査を行い、日本語学習に対する意識や学習方法に関する情報を収集するため、過去のインタビュー参加者を対象に追跡インタビューを実施する。この調査により、過去のインタビュー参加者の状況や変化、日本語学習に対する意識の変遷を把握する。次に、(2)大学院英語プログラムの留学生を指導している教員に対して、質問紙調査またはインタビュー調査を行う。この調査を通じて、教員の視点から英語プログラムにおける留学生の日本語教育に関する課題や意見を収集する。さらに、(3)韓国で日本の大学院留学を目指している学生を対象に、専門分野と日本語学習の現状を把握するための調査を開始する。この調査により、韓国の学生が直面している具体的な課題やニーズを明らかにし、将来の日本語教育支援策に活かす。 (1)と(2)の調査結果を詳細に分析し、研究成果をまとめ、積極的に研究発表や論文投稿を行う予定である。 (3)の調査結果から、英語を母国語としない理工系大学院留学生が研究で使用する言語の現状を探求する。 これらの活動を通じて、理工系留学生の日本語教育における意識やニーズをより深く理解し、効果的な支援策を提案することを目指す。
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Causes of Carryover |
2022年度は、オンライン会議を積極的に活用し、国内外の調査活動に取り組んだ。その結果、国内研究者の招へいにかかる人件費や謝金を削減するとともに、予算の効率的な活用が実現できた。2023年度では、さらに海外の研究機関での調査活動を活発化させる予定である。そのために、予算をセミナー開催費や研究分担者の海外旅費に充てることを計画している。共同研究者との協力を深めるために、海外でのセミナーやワークショップへの参加に予算を充足することで、研究成果の共有や新たな知見の獲得を促進する。 この予算配分の変更により、より広範な国際的なネットワークの構築や研究活動の国際化を図ることが期待される。
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