2023 Fiscal Year Research-status Report
医療コミュニケーションを支える他者視点獲得を目指した日本語力育成のための基礎研究
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22K00643
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
永射 紀子 国際医療福祉大学, 総合教育センター, 講師 (70786467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南部 みゆき 宮崎大学, 医学部, 准教授 (90550418)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 医学部留学生 / 聞き手意識 / 情報伝達力 / 振返り / わかりやすさ / 日本語中級レベル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は初年度未着手の課題であった「他者視点獲得のために必要な要素」の項目化に取り組んだ。そして今年度の研究計画にある「項目化した要素を用いた授業実践」も実施し、その効果を留学生による内省から明らかにした。また、留学生の日本語評価にも目を向け、どのような評価が可能かを多角的に検討した。具体的な内容は以下のとおりである。 (1)留学生の日本語に対する日本語母語話者評価(語学教員):コミュニケーションにおけるわかりやすさに関わる要素を抽出するため、日本語母語話者を聞き手とした評価を実施した。まずは専門知識を持つ語学教員による記述評価を行い、特徴的な語からわかりにくさに関する内容を分析し、留学生の抱える問題点を明確にした。この成果はポスターにまとめ学会発表を行った。 (2)わかりやすく話すことに対する留学生の意識変容に対する議論:(1)で抽出した項目を授業での指導や学習者用振り返りシートに取り入れた。授業実践を通して留学生がわかりやすさをどのように捉えられるようになったかを観察するために、留学生自身による内省を誘発するため、振り返りセッションを授業に取り入れ、どのようなことに気付いたかを記述式アンケートで収集した。この分析結果は、学会でポスター発表を行い、その成果を公表した。 (3)収集データの評価に関する多角的分析:留学生の日本語評価を見る際には、その評価者にも目を向ける必要がある。評価者である日本語母語話者のうち、(1)では専門知識を持つ語学教員による評価を用いたが、コミュニケーションにおいて聞き手となりうるのは専門知識を持たない一般の日本語母語話者である。そこで、一般の日本語母語話者による評価に関しても実態調査をすすめた。また、テキストデータのAIによる評価も検討し、様々な評価方法の可能性についても議論を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、まず、遅れていた「項目抽出」を実施した。さらに当初からの計画である「抽出した項目を用いた授業実践」までを連続して実施し、各行程の問題点の洗い出しをおこなった。項目化に関しては、学習者に説明可能な言葉に落とし込むことで、よりわかりやすい指導方法の検証を次年度の課題とした。研究成果の発表は、日本語母語話者(専門家・一般)による評価分析、留学生の意識の変容に関する内容をまとめ、学会で発表し有益なフィードバックバックが得られた。このうち専門家評価による項目化の試みは学会で発表した内容を見直し論文として投稿した。また、日本語母語話者評価のうち、一般日本語母語話者の評価傾向の分析、それから、生成系AIによる評価と日本語母語話者との評価比較の2つを、それぞれ国内、海外開催の学会への発表応募を済ませている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、指導項目を取り入れた授業実践の効果も分析対象としていることから、2023年度の研究過程で指導項目への理解を深めるために、振り返りの効果的な進め方についても検討を進める。 さらに3年目である2024年度は、留学生の作文評価、会話評価などによる総合的な能力評価などを行い、項目指導の有効性の検討にとりかかる。これまでの研究では、主に口頭表現に絞って「わかりにくさ」の原因を探ってきた。しかし、コミュニケーション能力は口頭表現に限定されるものではなく、作文などの記述においても同様にわかりやすさが求められると考えられる。そのため、両技能における伝達能力を評価する予定である。その際に収集するデータを用いてわかりやすさの達成度等も調査し、留学生の総合的な情報伝達能力の向上についても、その方法を議論する。
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Causes of Carryover |
2023年度予算に関しては執行区分の移動はあるものの、予算額からすると概ね計画通りの執行ができている。一方、初年度からの繰り越しがそのまま残った形になったが、これについては、計画が遅れていた人件費・謝金での使用を2024年度も継続して実施する予定である。新たに会話評価を取り入れる予定で、その担当者に対する謝金や、交流授業の参加者(日本語母語話者)への謝金等で計上する予定である。このほかにも、2024年度に参加する国際大会で台湾の研究者と共同研究について協議を予定しており、これの調査にかかる必要経費としても支出を考えている。
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Research Products
(2 results)