2023 Fiscal Year Research-status Report
Developing positive attitudes towards learning English through activities related to storytelling
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22K00741
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
アレン・玉井 光江 青山学院大学, 文学部, 教授 (50188413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 勝久 千葉大学, 教育学部, 教授 (60362745)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 小学校英語 / ストーリーの関連活動 / 英語のスキル向上 / エンゲージメント / 社会・情緒スキル / ストーリーテリング / ジョイント・ストーリーテリング / 母語における物語体験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小学生を対象にストーリー関連活動が児童の英語のスキルの発達および授業へのエンゲージメントにどのように影響するのかを探ることを目的としている。今年度、代表者と分担者は主に授業実践と見学を通して、ストーリー活動と児童の言語スキルの発達および授業へのエンゲージメントについて、観察およびアンケート、テストなどで検証した。 代表者はデータを基に、他活動と比べてのストーリー関連活動のエンゲージメントやその学年差について日本教育心理学会総会において発表した。さらに外国語教育におけるストーリーの重要性を再認識し、その知見を基に小学生用のストーリーブックの4冊目を作成した。 今年度は昨年に引き続き社会的、情緒的、認知的なエンゲージメントとともに物語エンゲージメントを加えてアンケート項目を作成し、実際に教えた児童105名、および同じ地域でストーリー関連活動を経験している児童453名を対象に、学年度末アンケートを実施した。また今年度は実際に教えている児童に対しては、語彙テストおよびレシテーションテスト、およびインタビューを実施し、言語スキルの発達を見るとともに、英語でのストーリー関連活動に影響を及ぼすと考えられる母語での物語体験などについても検証した。来年度、その結果を日本児童英語教育学会の全国大会および、AILA 60th Anniversary World Congress 2024で発表する予定である。また、年度末ストーリーテリングが盛んにおこなわれている台北市の英語教育を視察した。 一方、分担者は研究代表者が開発したストーリーを基盤としたプログラムを実施している小学校での授業を見学し、教員および児童の反応について質的に研究を進めた。共同では、ストーリーに関連した活動をどのように公立小学校で展開できるかについて研修会を開き、小学校担任教員および英語担当専科教員と共有した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究に協力していただいている小学校の高学年の授業では,①リタラシー指導,②教科書指導,そして③ストーリー関連活動と、3つの大きな活動が行われている。児童がストーリー関連活動にどのようにエンゲージしているかを調べるためには、彼らがどのように他の授業活動に関わっているかも調べる必要がある。昨年度ストーリーのみについて開発したアンケートは質問項目が多すぎるため、今年度はそれらの質問項目を精選し、3つの活動について平等に問うアンケートを開発し、学年度末に実施することができ、現在データを分析している。 また、ストーリー関連活動と児童の英語スキルとの関連について、昨年度はリスニング能力について9項目のテストを実施しただけであった。今年度は英語スキルについて他の側面からも測定する予定にしていたので、導入したストーリーに出現した語彙と表現を理解しているかを問うテストを実施した。その結果、児童(105名)のテストスコアは活動の導入前後で大きく変化しており、統計的にも有意に理解力を伸ばしていたことが証明できた。 さらに、今年度は児童が物語の世界観を感じることができるような活動を意識的に取り入れる方法を探した。また、それらの工夫に対する児童の反応を見るため、プリント教材の中に1~2問、質問を準備した。現在分析をしているデータから、興味深い反応が多々見られる。 以上のように昨年度予定していたことは全て実行することができたが、これらは管理職を始め、チームティーチングをしている学級担任のご理解があって初めて実行できたことであり、深く感謝している。ストーリーテリングを実施している英語専科教員や学級担任とのミーティングでは、昨年同様であるが、教員によるstorytellingや児童が行うJoint Storytellingにより児童が社会的に、また情動的に授業に参加しているのが嬉しいとの声が多く聞かれた。
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Strategy for Future Research Activity |
言語の歴史の中で活字はあくまでも副次的に発生した比較的に歴史の浅いものであるのに対し、音声言語は言語の進化とともに歴史をともにしてきた。人は「音」で結ばれる。その中でもストーリーテリングは太古の昔から行われてきた口頭芸術である。深層心理学者であった河合隼雄氏は、「物語は一見荒唐無稽に見え「知恵の宝庫」である」という。言語スキルの発達から考えると、ストーリーテリングは語彙や表現の習得を促し、リスニング力を高め、学習における言語スキルの統合性を高めると言われている。本研究では、物語を使用して外国語教育を行うことにどのような利点があるのかを探り、日本人の児童がどのように物語を中心とした指導に関わっているかを検証してきた。 次年度は本研究の最後の年度にあたる。過去2年にわたり収集したデータを分析し、ストーリー関連活動が児童の英語のスキルの発達および授業へのエンゲージメントにどのように影響したのかをまとめたい。特に100名ちかい6年生から収集したインタビューデータには、テストやアンケートではみることができない、児童の物語に対する思いや考え方が表現されているので、分析には時間がかかるが、丁寧に分析したいと考えている。 さらに、研究代表者は過去に行った挑戦的萌芽研究(平成23~25年度「文脈を大切にした小学校英語教育―ストーリーを中心にしたカリキュラム開発」, 23652144)、また多くのリタラシー関連の研究(例として平成28~31年度「21世紀型リタラシー獲得を目指した小中連携の英語プログラムの開発と検証」、16H03453)を参考に、ストーリーに関連した活動を中心に児童の英語力の発達、またその効果について書籍にまとめたいと考えている。また、分担者は家族の体調不良だけでなく自身の体調も優れず、十分に参加できない状態にあったが、次年度はできるだけ参加をするとの意向を示されている。
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Causes of Carryover |
ストーリー関連活動を活発に行っている海外の小学校を視察する予定をしていたが、1年目の2022年度はコロナ感染拡大のため、研究代表者はそれを実行することができなかった。研究分担者は視察できたものの、台湾への短期間視察のみにとどめた。そのため初年度の予定使用額を2年目の2023年度に繰り越した。 2023年度は、研究代表者は海外視察を遂行できたが、研究分担者は視察に参加できなかった。それは研究分担者が家族の看病をしなくてはいけないだけでなく、ご自身も体調を崩されたからである。海外視察だけではなく、当初予定していた多くの研究を遂行することが難しく、そのため、分担金を未使用で2024年度に繰り越すことになった。 2024年度は研究のまとめになる年であるが、まずはデータが集積されているので、データ入力を昨年以上に進めていく必要があり、院生をアルバイトとして雇用し、謝金を使用する。さらには購入した質的データの処理をするため、使用するソフトウェア(NVIVO)のオンライン講習会なども受ける予定である。また、研究のまとめを書籍として刊行したいと考えている。さらには、さいごの年なので研究者と分担者ともにアジア圏で英語教育が成功している国の教育現場を一緒に視察したいと考えている。
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