2022 Fiscal Year Research-status Report
日本語音声学習支援を目的とした日本語学習者の知覚学習効果と客観的指標の検討
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22K00786
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
鮮于 媚 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (60734738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 希子 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (80607896)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 長短音素 / 第二言語習得 / 促音 / 撥音 / 聴覚特性 / リズム / 音声学習支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、日本語を第二言語として学ぶ学習者(以下、日本語学習者)が日本語音声をより感覚かつ体系的に学習していくようなシステムを開発し、音声学習を支援することである。特に、日本語音声の特徴に最も重要なリズム、韻律の学習に関わる時間制御を中心にし、検証を行う。具体的な研究内容は次の通りである。 第一に、多言語の日本語学習者による時間制御特徴を科学的に分析し、客観的な評価指標を求める。本研究では、多言語話者に適した日本語音声の評価指標として、言語特有の特徴に依存しない普遍的な要素として、人間の聴知覚特性を考慮した変数を検討する。第二に、多言語の日本語学習者の時間制御の知覚的特徴を把握し、人間の聴知覚的特性を考慮した上での段階的な聴取練習方法への応用をする。ここでは、時間制御に関わる「リズム」、「韻律特徴」のキーとなる音の感覚を知覚的に強化した形で再現、聴取練習訓練を検証する。第三に、言語によらない「音をデザイン」し、心地のいい音でかつ音声学習時に必要な音の特徴を強化した「音」を作り、検証し、学習システムに取り入れることである。つまり、言語音に含まれている音声の複雑さから負の影響を受けず、音、そのものを感覚的に学習できる方法を検証する。この研究成果は、日本語の時間制御の本質は何かを科学的に解明すると共に、多言語を背景に持つ日本語学習者にICT(情報通信技術)を用いた言語教育の学習支援システムの開発をする際に基礎的な資料となると考える。上記の目的を達成するため、日本語学習者に知覚、生成の音声特徴について基礎的な調査を実施した。今年度は、中国語母語話者による日本語の撥音の知覚および生成調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、二つの側面から研究を進めていた。まず、実態調査である。近年、日本語学習者の使用状況の変化ある中、さまざまな背景を持つ日本語学習者も増えている。中でも、中国語母語とする日本語学習者、特に、日本に在住し、年少者も増えつつあり、日本語学習支援が必要となっている。本研究では、年少者であり、中国語母語話者である日本語学習者を対象とした撥音の知覚および生成を実施した。コロナ禍により対面での実施が遅れていたものの、データの収集および分析を実施し、論文としても投稿することができた。今後、中国語母語話者や他の言語話者の実態を把握するようにする予定である。次に、データの追加分析である。従来のデータの分析も進めており、論文として投稿を予定している。来年度に向けてのオンライン調査の準備および従来の成果から改善を行った知覚調査の方法も具体化しているため、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画は次の通りである。 第一に、新しい方法を取り入れた長短音素の知覚訓練調査とそのための基礎調査である。 これらの知覚訓練は、視覚化情報との融合や「音をデザイン」した内容を盛り込み、基礎的な調査を進めた上で、知覚学習の方法を探る。 第二に、日本語長短音素の共通変数に関する調査である。長短音素の共通要素について、聴覚的特性を取り入れた変数を検討する。本研究の検討は、母音の開始間隔と追加で、時間長の要素と関連のある調音時間との関連性を取り入れる予定である。また、従来のリズムの測定の変数との比較をし、より説明のできる変数を探す。変数の検討とともに、変数が長短音素の発音の自然性と関連しているかどうかについて検討する。これらの条件については、さまざまな背景を持つ日本語学習者を対象とした検討、そして、合成音声を用いた自然性検討の二つの観点から調査および分析を行う。これらの結果に基づき、日本語のリズム学習の方法の一つとして提案する。
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Causes of Carryover |
今年度は、従来のデータの分析を実施したため、次年度使用額が生じた。また、知覚調査の方法の検討を行っていたため、予定していた知覚調査は実施をせず、次年度に実施することにしたためである。
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Research Products
(1 results)