2023 Fiscal Year Research-status Report
英文読解力と語彙力向上のためのRWL(音声を伴う多読)導入の効果と適正時期の検証
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22K00798
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Research Institution | Kaichi International University |
Principal Investigator |
田近 裕子 開智国際大学, 教育学部, 教授 (80188268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 比呂志 開智国際大学, 教育学部, 教授 (00424086)
豊嶋 朗子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (20527717)
蘇 韋綸 開智国際大学, 国際教養学部, 助教 (20883359) [Withdrawn]
奥脇 奈津美 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (60363884)
野田 小枝子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (60408474) [Withdrawn]
星野 徳子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (70609841)
奥木 夕子 開智国際大学, 教育学部, 講師 (00987414)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 英文の多読 / 語彙力 / 音声入力 / 読解 / 教授法 / 適正時期 |
Outline of Annual Research Achievements |
RWL(Reading While Listening)の効果について前年度に加えて更に理論面および実践面で研究を進めた。理論的側面からは、読解過程において音声インプットと文字インプットが同時に起こるという現象が、プラスに作用するのかあるいはマイナスの働きをするのかについて、考察した。その際、Baddeley et al.(1981)(1998)およびBaddeley(2000)にあるように、文字情報処理において何らかの形での内在化された音声(subvocalization)が関与している可能性がある事から(cf. Tajika, 2024)、このいわゆる内在的な音声と、リスニングのインプットによる聴き取りの音声との関係が、RWL(Reading While Listening)研究の重要な鍵となることが明らかになった。つまり、RWL研究では、実際に聞こえる音声と、テクスト読解過程での内在化された音声(subvocalization)と、おそらくテクスト内容の理解の少なくとも3要素が相互に関わり合って、読解作業が進む。あくまでも、まだ仮説の段階であるが、この3要素の関係が、学習者によって大きく異なるためその3要素の働きの調整がテクスト理解を促進したり、場合によっては阻害したりする可能性があると考えられる。また、実践面では、音声をともなる段階別テキストの教材化・整備を行い、希望する学生は自ら図書館でRWLの練習ができるよう整備し、告知に努めた。RWL教材の図書館内における所在、どのような教材があるのか、どのようにインターネット等でもアクセスできるのか、どのように利用できるかなど、図書館内外でのRWLの利便性を訴えるべく、学習意欲を高めるようなブローシュアも準備し、より広い活用を促した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RWL教材については学習者の必要性に応じられるよう準備をととのえることがほぼできたが、実際に広く学生が自ら進んでRWLを活用したり、その中でも、どのレベルでどのような事に関心のある学生にとって、どの語彙レベルの多読教材、どれくらいのスピードの音声インプット、どのような内容の教材が適しているかを探り当てるところまでは進んでいない。これは、かなり複雑な検証になると思われるが、多くの英語学習者の抱える問題を解決するためには、ぜひ、割り出さなければならない問題点であると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今までに整えたRWL教材を用いて、さまざまな言語習得段階の学生の中から、どの言語レベルあるいは、どれくらいの語彙レベルの学生にとって、どの多読教材がどれくらいの音声スピードで入力されると、言語習得に効果的か、あるいはかえって困難を来すかなどの点を明らかにするべく、データ収集と得られたデータの分析に力を入れていく予定である。 これらの点が明らかになれば、日本の英語教育において、どの学習段階でどのようなRWL教材を導入すればより学習効果が上がるかを明らかにできると考える。また、RWLの効果として、テクスト読解のみならず、リスニングおよびスピーキングのスキルへの効果もありうるのではないかと考えるに至ったので、このような点についても可能性を考えていく予定である。
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Causes of Carryover |
予算の繰り越しが生じた背景には2つの要因がある。その一つは、以前から招聘を考えていた多読の専門家であるニュージーランドのProf. Paul Nationや、音声を伴う多読(RWL)を協力に推進している台湾の Prof. Anna C.-S. Changの招聘がコロナの影響でまだ実現できていなかったことである。2024年度には両教授あるいはどちらかを招聘して国際会議を開催する予定である。また、二つ目の要因としては、教材作成等に学生アルバイトの動員を予定していたが、教材研究及び作成に関心のある教員志望の学生ボランティアの補助を得たため支払いの必要がなくなった事があった。2024年度は一般の学生アルバイトの可能性が高いので支払いの必要が生じるものと思われる。
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