2023 Fiscal Year Research-status Report
フランス帝国の構造実態に関する研究:東アジアにおける人的ネットワークをめぐって
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22K00842
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 友和 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 准教授 (10727788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 託 佐賀大学, 教育学部, 教授 (30611868)
日向 伸介 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 准教授 (60753689)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フランス帝国 / 帝国の人的ネットワーク / フランス植民地 / フランス外務省 / 仏領インドシナ / シャム-フランス / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀後半~20世紀前半の東アジア(インドシナ―日本―シャム(タイ))をめぐるフランス帝国の人的ネットワークに焦点を当て、そこからフランス帝国の構造実態と歴史的意義を明らかにするものである。令和5年度は、研究参加者のあいだで共通の検討対象とする人物や問題とすべき事例についての議論を開始する予定であった。計4回の研究会と研究参加者が各自1~2回の海外史料調査を行なった。 岡田(代表)は、20世紀初頭に外交官兼インドシナ植民地総督であったアントワーヌ・クロブコワスキ(Antoine Klobukowaski)の経歴や行動を調査し、このアクターが外務省系、植民地省系、総督府系、軍部系にまたがる動きをしていたことを確認した。岡本(分担)は、19世紀以降のフランスの東アジア進出に重要な役割を果たしたウートレ(Outrey)家について調査し、この代々外交官の家系が文化資本を醸成していたことを明らかにした。このうち20世紀初頭にインドシナや本国議会で活動したエルネスト・ウートレ(Ernest Outrey)はクロブコワスキとも関わる重要なアクターであり、この研究成果については関西フランス史研究会第199回(再編第74回)(2023年10月14日於・龍谷大学深草学舎)において岡田・岡本が共同で発表を行なった。また、日向(分担)は、近代におけるシャム-フランスの関係史を一次史料も含めて整理し、シャムの法学分野におけるフランス人の役割や、フランス留学生が人民党の革命思想に与えた影響、極東学院の学者ジョルジュ・セデスとシャム王族・知識人の関係の重要性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の後半には、これまでの研究成果をふまえて用意した課題について調査するために、それぞれが海外における文書館(フランス国立海外領文書館、フランス国立外務省文書館、タイ国立文書館)で一次史料の調査を行うことができた。そこから研究参加者全員の調査の結果を照らし合わせる作業が可能になってきており、重要と思われるアクターや相互に関連するアクターの存在、検討すべき論点がみえてきた。とりわけ中国・日本・シャムの大使館・領事館所属の外交官(外務省系)と仏領インドシナ総督府所属の植民地官吏(植民地省系・総督府系)のあいだの人的・構造的な関係が、東アジアにおけるフランス帝国のネットワークを構築するうえで重要であることを確認できた。このことは大きな成果であり、この点において本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展したといえる。 他方で、上記のような公務員を中心としたネットワークには、常に軍人、経済人、学者のアクターが制度的・構造的に関わっていることも予測しており、このうち学者についてはシャムを対象に検討をはじめているが、まだ具体的な調査は進展していない。中国や日本におけるこれらのアクターの相互関係を対象とした調査と検討が今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、インドシナ・中国・シャム・日本で活動した外務省系と植民地省系・総督府系のアクターを中心に調査を継続しつつ、軍部、経済人、学者のアクターとそのネットワークにも目を配る。年間4回程度の研究参加者による各報告・全体議論に加え、参加者以外の専門家にも意見を聞く機会を設ける。とりわけ中国のフランス大使館・領事館における外交官の活動実態については中国近代史の専門家を招聘して検討する必要があると考えている。また、シャムにおけるフランス人の活動を幅広く把握するために、タイの都市史・建築史の観点から専門家に意見を聞く予定である。これらの作業を次年度の前半に行いつつ、同時に研究参加者は各自(または共同で)成果のアウトプットを進め、3年間の総括となる結果を導く。 なお、本研究は、参加者3名による史料調査と議論をとおして多くの新たな発見を見出しているが、課題の全体を明らかにするにはまだ時間を要することが分かった。本研究は、今後、3名以外に中国史や日本史、経済史などを専門とする研究者にも協力を要請しながら、次の段階を見据えて、少しずつ共同研究体制の規模を大きくしていく計画を考えている。
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Causes of Carryover |
航空券費および宿泊費の高騰によりフランスの文書館(フランス国立海外文書館、フランス国立外務省文書館およびフランス国立図書館)とタイの文書館(タイ国立文書館)における史料調査に必要な日数で予算を組むことができなかったため、残額を次年度に持越し、これを次年度にも計画している上記文書館での調査または学会発表のための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)